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【ひとり暮らしのマンションリフォーム】エッセイスト・岸本葉子さんが50代で手に入れた快適な空間を拝見[前編]

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ゆうゆう編集部

【ひとり暮らしのマンションリフォーム】エッセイスト・岸本葉子さんが50代で手に入れた快適な空間を拝見[前編]

岸本葉子さん宅のキッチン。特にこだわったのは壁のタイルだそう。

クラシカルな洋館のような家に憧れていたというエッセイストの岸本葉子さん。自宅マンションのリフォームを機に、憧れを自分流にアレンジし、「好きなものに囲まれた」住まいを実現。そこは、身も心も快適に暮らすための極意や工夫が詰まった空間でした。

お話を伺ったのは
エッセイスト 岸本葉子さん

きしもと・ようこ●1961年、神奈川県生まれ。東京大学教養学部卒業。保険会社勤務、中国留学を経てエッセイストに。暮らしや旅をテーマにした随筆を多く発表し、同世代の女性を中心に支持を得る。近著は『ひとり上手のがんばらない家事』(だいわ文庫)。

見た目や居心地に加え、機能性も考えた私のお城

玄関からリビングに通されると、そこはまるでおしゃれなカフェのよう。「昭和初期の古い洋館みたいな感じにしたくて」と言う岸本葉子さんのイメージどおりの、統一感のある落ち着いた空間だ。

2016年に2LDKのマンションをフルリフォームした。その際にもともともっていたお気に入りのテーブルと同じ素材で、食器棚とテレビボードもセミオーダーしてそろえた。家具、カーテン、クッション、ティーカップなどの食器に至るまで、すべて自分で選んだ好きなものに囲まれ、「家にいることそのものが心地いい」と話す岸本さん。

なかでも一番のお気に入りは、玄関をあけるとパッと目に飛び込んでくる植物柄の壁紙だとか(次ページに写真を掲載)。

「19世紀イギリスのデザイナー、ウィリアム・モリスのものです。以前は無難な白っぽい壁紙でしたから、大柄の壁紙を張るのは勇気がいりました。でも、部分使いなら圧迫感もなく飽きがこないかなと、取り入れてみたんです。モリスの絵柄は大好きで、見るたび気分が上がりますね」

お気に入りの家具で統一されたリビングは、ホッと一息つく、くつろぎの場。「テーブルにものを出しっぱなしにせず、この状態をキープしています」

若い頃から世界を旅し、各国の家やインテリアを見てきた岸本さんは、リフォームに当たって「こんな家に住みたい」というモデルがあった。「30代のとき、タイの本屋さんで購入した本です」と見せてくれたのは、タイに建てられたヨーロッパ各国の大使公邸の写真集。

「素敵な内装にインテリア……。写真に魅せられ、当時はただその本が欲しくて買って、まさか自分の家造りに役立てようとは思ってもみませんでした。それが50代になってリフォームを考えたとき、この本の写真が思い浮かんで。60平方メートルに満たない私のマンションと大使公邸では規模が全然違いますが、ヨーロッパ調だけどアジアに建てられた家なので参考になるかなと」

この本を参考にリフォーム

30代の頃、旅先のタイで買ったヨーロッパ各国の大使公邸の写真集『Heritage Homes of Thailand』。リフォームはこの本を参考にし、「キッチンの壁はこんな感じで」と業者に伝えた。

壁紙など内装の色も本からイメージをふくらませ、仕事部屋の壁はミントグリーン(次ページに写真を掲載)、寝室はベージュ、キッチンは青と白、と部屋ごとにカラーを変えた。

「リフォーム業者さんとの打ち合わせで、『こんな色で、こんなふうに』とイメージを伝えるときに、この本が役立ちましたね。おかげで理想に近い住まいができ上がりました」

見た目や居心地だけでなく、老後を見据え、使いがってや機能性にもこだわった。そのひとつが引き戸だ。

「晩年は車椅子で生活していた父の介護を経験し、移動のときに開き戸がいかに大変か痛感しました。介護する私がドアノブを持って引いて、ドアをあけて、後ろに下がって車椅子を押す……というふうにたくさん動かなければならず、大変でした。引き戸なら片手でさっとあけて、そのまま前に移動できます。なので、可能なかぎり、上吊り式の引き戸に替えました。戸の開閉がラクですし、動線にもスペースにも無駄が出ない。これから改築を考えている方にはおすすめです」

上吊り式引き戸で無駄のない動線に

将来、足腰が弱り車椅子になることも想定し、リフォームの際に開き戸を上吊り式引き戸に替えた。

「床にレールがなくフラットなので、つまずくこともない。年を重ねたときだけでなく、今でも開閉はラクだし、動線に無駄が出ないし、引き戸にしてよかったと満足」

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