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【戦後80年に読みたい一作】坂口安吾の『続戦争と一人の女』あらすじ紹介。女主人公の目を通して語られる、戦時下の愛憎ドラマ

小説

公開日

2025.06.12

更新日

2025.06.12

ゆうゆうtime編集部

【戦後80年に読みたい一作】坂口安吾の『続戦争と一人の女』あらすじ紹介。女主人公の目を通して語られる、戦時下の愛憎ドラマ

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戦後80年である2025年に特に読みたい小説を紹介します。坂口安吾の小説『続戦争と一人の女』。戦争に翻弄される人々の赤裸々な姿、生きることへの執着、そして愛憎が交錯する物語です。激動する時代の中、女主人公の目を通して語られるリアルな思いに触れてみてください。

カマキリ親爺とデブ親爺、戦時下の断片的日常

物語は、戦時中の東京で描かれています。主人公の「私」が出会うのは、町工場経営者の「カマキリ親爺」と井戸屋の「デブ親爺」という60代の男性たち。「私」を「姐さん」や「奥さん」と呼び、その態度や呼び方に微妙なニュアンスを含むカマキリは気味悪い存在で、一方でデブ親爺は、より人間味があり「私」に好感を持たれています。彼らと共に集まって賭博をするという奇妙な日常風景の中、空襲の恐怖や戦争の陰が色濃く迫ります。

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焼け跡の中での欲望と孤独

カマキリ親爺やデブ親爺の歪な人間関係を背景に、「私」の過去や心中が少しずつ語られていきます。「私」はかつて遊郭で女郎をしていた過去を持ち、その後に野村という男と同棲生活を始めました。彼女は愛の既成概念を拒みながらも、自らの性を遊び道具のように扱いつつ、野村にだけは複雑な愛情を注いでいます。この戦争下で人々が抱える本能的な孤独、欲望、恐怖、さらには戦争自体の美しさを感じるという心の動きが赤裸々に描かれます。

崩壊する街、そして愛のかたち

一方で、「私」と野村が住む地区では空襲によって街が火の海と化します。焼け野原を見つめる「私」は、戦争の壮絶な光景にも美しさを見出し、自らの存在すらも儚いものと感じるようになります。しかし、その中で野村との関係は変化していきます。火に包まれた家を必死に守ろうとする二人の姿は、戦時下に生まれる愛のかたちの異様で純粋な一面を映し出しています。

終戦後の日本と果てしない退屈

やがて戦争が終わり、カマキリ親爺や野村も変わった現実の中で揺れます。戦争という「特別な日常」を終えた「私」は退屈に苛まれる一方で、生きること自体の猥雑さを実感します。それでも、人間の不条理や悲哀に向き合いながら、自分の欲望や異性との関わりを軸に、これからも生きていく想いを抱えます。戦時下の緊張感が解けても、人間の孤独や葛藤は消えることがないことを強調するような結末です。

まとめ

坂口安吾が『続戦争と一人の女』で描いたのは、人間の生きる本質そのものです。戦時下という極限状況の中、人々は自らの欲望、本性、そして愛憎に直面します。特に「私」という女性主人公を通じて浮かび上がるのは、戦争の非日常性と、それがもたらす人間関係のゆがみ、社会の激変。しかし、一方では戦争を通じて研ぎ澄まされる感覚、美への感動も描かれており、非常に複雑なテーマを孕んだ作品です。戦争後の淡々とした日常における「退屈」という感覚が、逆説的に戦時の生命力を際立たせます。坂口安吾のリアルな筆致は、読む人に深い問いを投げかけ、戦争という歴史的事件の中に隠された個の人生そのものの哀しみや喜びを感じさせてくれる名作です。ぜひ自分自身の目でこの物語の深みを味わってください。