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還暦を目の前にして、何を思う? 「一度リセットするのもおもしろいかも」と中島京子さん

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中根佳律子

50代の方は、60代を目前にして何を考えますか。以前は「新しいことを始めるのは40代がギリギリ」と思っていた中島京子さん。でも還暦を目前にしたいま、「何か新しいことができるかも!」と考えはじめたそう。新刊『小日向でお茶を』(3月20日発売予定)には、マチュア世代へのエールが満載です。中島京子さんのインタビューから人生が楽しくなるヒントをご紹介しましょう。

人生の失敗を数えるよりも……

「五十年も生きていると、実際は、自分の人生にいくつかの、失敗を認めざるを得ない。もっと若いうちなら修正もきくけど、五十代では修正は不可能だ」(『小日向でお茶を』より)

結婚する・しない、子どもを持つ・持たない、仕事の選択、やってしまったこと・やらなかったこと――あなたの後悔は、なんだろうか?

誰にでも何かしら、人生の「しまった!」があるはずだけれど、中島さんはエッセイの中でこう続けている。
「だけど、そういう年になったなら、あれは失敗だったなんて思うのはやめたほうがいい。だって、取り返せないことを責めるのはつらい。それより、自分なりに持つことのできたものを認めて、満足するほうが幸せになれるんじゃないだろうか」

人生は長い。50代~60代なら、この先30年の人生がある。その30年を後悔しながら過ごすのはいやだから、手に入れたものを愛おしんで生きるのだ。

「私が自分なりに持てたものは、やっぱり仕事ですね。たくさん書くことは減るかもしれないけれど、きっと書き続ける。そういうものを持てたのは、とても幸せなことだと思っています」

新しいことを、ひょいっとやっちゃう!

中島さんは来年、還暦を迎える。60才前後に最近感じているのは、「何か新しいことを、ひょいっとやっちゃうことがある年代」だということだ。

「もちろん、これまで自分が築いてきたものをいつくしんで、大切にしていく人は多いです。私も多分そのタイプ。一方で、全然違うことに挑戦する人もいるのね」

新しいことを始めるなら20代か30代。40代がギリギリ、だと思っていた。
「でもたとえば、“子ども食堂”を始めるのって、たいていおばちゃんですよね。若い人じゃない。多くの難民を受けて入れているドイツでは、おばちゃん世代が自宅に彼らを住まわせているそうですよ。子どもが独立して部屋が空いてるからどうぞ、って」

子どもの手が離れること。介護が終わること。コツコツ働いてきて、ある程度自分の裁量で使えるお金があること――時間とお金の条件がそろうと、人はひょいっと何かをやっちゃうんじゃないか、というのだ。

「新聞記者で、定年後にスペインに渡り、お豆腐屋さんになっちゃった人もいます。そういう冒険は、いろいろなしがらみがなくなる60代ぐらいからが、むしろ現実的なのかもしれませんね」

還暦は、人生リセットのチャンスかも

中島さんは最近、1枚の写真を見て、ふき出したという。
「ある名家の方の、還暦祝いの写真です。還暦って、再び赤ちゃんに戻るという意味ですよね。それで、パーティにかけつけた会社の社長や重役が、全員おなじみの赤い頭巾とちゃんちゃんこで、ずらーっと並んでいるの。立派な肩書きのある人たちの赤ちゃん集団が、とってもシュールで、おかしくて(笑)」

でもそれは、ある種の感動でもあったという。
「今までのことは一回チャラにしてね。何かを始めて失敗しても『しょうがないよ、まだ赤ちゃんなんだから』って開き直れる。赤ちゃんなんだから、うまくできなくても仕方ないですって」

50代はずっと、「これから新しいことを始めるなんて無理だ」と思ってきた中島さんだが、還暦を目前にして、少し違う思いがよぎることがあるらしい。

「ひょっとしたら、今まで培ってきたもので!というこだわりを捨てちゃう年齢なのかも。『だって赤ちゃんなんだも~ん』で人生をリセットするのも、面白いかもしれませんよね」

撮影/川上尚見

中島京子さんプロフィール

1964年東京都出身。2010年『小さいおうち』で第143回直木賞 受賞。『かたづの!』で第28回柴田錬三郎賞、『長いお別れ』で 第10回中央公論文芸賞、『夢見る帝国図書館』で第30回紫式部 文学賞、『やさしい猫』で第72回芸術選奨文部科学大臣賞、第 56回吉川英治文学賞を受賞。その他、著書多数。

小日向でお茶を

中島京子著
主婦の友社刊

人気直木賞作家 中島京子初・グルメ、旅、自身の身の回りや体調の変化などについて、ユーモラスに語ったエッセイ集。雑誌「ゆうゆう」に5年にわたり、2018年から連載された「羊のところへはもどれない」に加筆し、時系列に1冊にまとめた。

詳細はこちら

中島京子さん 新刊発売記念 ミニトークショー&お茶会・サイン会が開催されます

『小日向でお茶を』の刊行を記念して、中島京子さんの楽しいお話を、おいしいお茶とともに楽しむ限定イベントを開催! 心浮き立つスペシャルな春のお茶会へぜひ参加しませんか。

【イベントについて】
日時:4月2日(日)13:30~15:30 ※対面イベント
場所:目黒セントラルスクエア6階カフェ 東京都品川区上大崎3–1–1(JR目黒駅徒歩1分)
定員:40名(先着順)
料金:3800円(中島さんの新刊『小日向でお茶を』1冊、お菓子つき)

【お申し込み方法・締め切り】
イベントに参加ご希望の方は、URLよりお申し込みください。最大6名様までのグループ参加も可能です。今回は、ネットでのお申し込みのみとなります。パソコンやスマートフォンの操作が苦手な方は、ゆうゆう編集部までお問い合わせください。
締め切り 3月22日(水)23:59

お申し込みURL
https://peatix.com/event/3462609
【おみやげつき】
●新刊エッセイ本(1冊/サイン会あり)
●お菓子 お土産は、旅気分を味わえると大人気の、チェコのお菓子屋「ツックル」(日本で製造)のクッキーつめあわせを予定。他にも、目黒ゆかりの銘菓をご用意しています。お楽しみに!

【お問い合わせ】
ゆうゆう編集部 ☎03–5280–7402(平日10時~17時)

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