「団地のふたり」9話 80を過ぎた親が、50代シングルの娘の老後を心配する——その親心、娘にはどう届く?
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柚野木
団地との別れを告げる。え? 本当に?!
準備がいい人、と言えば、佐久間のおばちゃんが、ちゃっかりと未来に向けて動き始めていた。なんと、ここでの53年の暮らしに別れを告げて、千葉の息子家族と同居するらしい。
引っ越し業者が荷物を引き取りに来たあと、がらんとした部屋でおばちゃんがいつになくしんみりとして思い出を語る。新婚時代、団地の暮らしに憧れて住み始め、最先端のかっこいい設備に囲まれて暮らした日々。あんなにピカピカだった家が、いつしか古い、汚い、と言われるようになって、それでも住み続けた。なぜなら、思い出のつまったこの団地が大好きだからだ。
ここまで愛着のある佐久間のおばちゃんでも、いまが潮時だと判断して団地を去っていく。
そのあとも、ぽつぽつと団地を離れる人たちが出てくる。さびしい気持ちが高まるなか、追い打ちをかけるようにノエチのもとに残念な知らせが入る。大学での非常勤講師の仕事がなくなって、このままでは無職の身になってしまう。建替えになったら自分の部屋もなくなるし、これは正真正銘の大ピンチだ。どうする?ノエチ!
そして、なっちゃんにも決断のときがやってきた。この団地が取り壊されると決まったら、お母さんのいる静岡に引っ越すことにするらしい。つまりふたりの別れのときも迫ってきたのだ。
ここで改めて思う。ここまでふたりが気楽にやってこれたのは、この団地があったおかげだ。建替えが始まれば、住まいがなくなるだけでなく、団地にあったコミュニティそのものが消えて、そこに集う人たちがいなくなる。そして建替えが終わったとき、それは元通りにはならない。団地が消えてしまうと、亡くなった空ちゃんも、さらに遠くに行ってしまいそうだ。
いつになくセンチメンタルな気分でふたりが夕日を見つめ、団地との別れを告げる。え? 本当に?! こちらはまだ気持ちの整理がつかない。頭のなかに「セーラー服と機関銃」(薬師丸ひろ子)のイントロが流れ出す。“さよなら”は別れの言葉ではない。そう思いたい!
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