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ベートーベン役でミュージカルに挑む中村倫也さん。「いつも何かを探求して、面白がりながら生きていきたい」

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ゆうゆう編集部

シリアスからコメディまで、どんなにクセのある役柄にもピタリとハマる変幻自在な演技力で、ドラマ、映画、舞台などで活躍中に中村倫也さん。この秋、ベートーベン役で新たに挑むミュージカルの話を中心に気になる私生活や今後の展望などをたっぷり伺いました。

演出家・河原雅彦さんが開いてくれた舞台への道

今、最も旬な俳優として真っ先に名前が挙がるのは中村倫也さんだろう。2018年のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」で演じた〝ゆるふわ系〟大学生役が話題となり、大ブレイク。その後はドラマ「凪のお暇」でちょっぴり危険な〝人たらし〟男子役、映画『孤狼の血』で〝血の気が多い〟ヤクザ役、『ハケンアニメ!』でアニメ業界の〝カリスマ〟監督役など、振り幅の大きな演技力で多くの人を魅了してきた。

どんな役柄を演じても、そこには中村さんにしか醸し出せない空気感と存在感があり、さりとて観る者に解釈を押しつけない自由さもある。そんな稀有な才能で、今や映画にドラマに舞台に引っ張りだこ。

「売れてますね、僕、はっはっはっ」
近年の大躍進を軽快に笑い飛ばす。だが、今に至るまでには試練の日々もあった。16歳で芸能事務所の養成所に入り、18歳で俳優デビュー。転機となったのは2009年の舞台『真心一座 身も心も 流れ姉妹〜獣たちの夜〜』。

「演出家の河原雅彦さんがこの舞台に呼んでくれて、それを観た演劇界のいろんな人が声をかけてくれて、またそれを観て面白がってくれる人がいて……。それまでは連ドラのゲストで3シーンくらい出るような役ばかりで、達成感なんか感じられるわけもなかった。それは自分の実力不足だったんですけどね。そんな鬱屈している若手時代に、舞台は自分の生きていく支えになりました。その道を開いてくれたのは間違いなく、河原さんです」

それ以来、河原さんとは幾度となく共に舞台をつくり上げてきた。そして今年10月、主演・中村倫也×演出・河原雅彦、約7年ぶりとなるタッグがついに実現する。

観た人の反応がわかる舞台は健全なものづくり

10月29日に幕を開けるミュージカル『ルードヴィヒ〜Beethoven The Piano〜』。約4年前に韓国で上演されたミュージカルの日本版で、河原さんが上演台本・演出を手がける。
「河原さんが真面目なミュージカルをやりたいというのは意外でした。でも、僕に生きる道を与えてくれた人が新しいチャレンジをするうえで『一緒にやろう』と言ってくれるなら、しんどそうだけれど『やるっきゃないな』と思いました」

中村さんが演じる主人公は偉大なる音楽家、ベートーベン。誰もが知る天才音楽家を演じるのは面白くも難しそうだが……。

「ベートーベンの顔も生涯も作品も知っているけれど、演じるに当たってはあんまり気にしていません。だって会ったことないですから(笑)。そもそも若い頃のベートーベンの顔を調べたら、僕よりも(俳優の)浅利陽介のほうが似ていました。浅利陽介にオファーがいくべきところ、僕のところに来ているわけですから(笑)。だから、過去の偉人でも漫画の実写版でも全然気にしない。そんなことより、『ここに集まったメンツでいいものをつくったほうがいいじゃん』と思っています」

出演者は5人だけのミュージカル。共演には木下晴香さん、福士誠治さんが名を連ねる。
「晴香はミュージカル経験が豊富で、僕や河原さんよりその界隈のことに詳しいはず。『こういうとき、どうしてんの?』みたいなことを、みんな晴香に聞きに行くんじゃないかなと予想しています。誠治くんは自分で芝居をつくったり、音楽活動をしたり、すごくアツい人というイメージ。誠治くんが兄貴肌だから、今回、僕は座長らしいことをしなてくもいいなと思っています。僕のやることは率先して恥かきながら、喉を壊さないようにフルスロットルで頑張ること。あとは体に気をつけて、健康第一で過ごすことかな」

では、中村さんにとって舞台とはどんな場所なのだろうか。
「結局のところ、好きでやってるだけなんですよね。舞台というのは、みんなで稽古をして、本番を迎えて、ひとりの人間の人生や半生を一方通行で描いていく。それを観た人がどんな表情をするのか、どんな拍手をしてくれるのか、そういう反応が見られるって、ものづくりとしても人としてもすごく健全だなと思うんです。勤務時間的にもね(笑)。そのぶん、映像作品のような微妙なアングルの変化や照明、音などがない一枚絵なので、すべてバレるという怖さもあります。立ち姿ひとつとっても、観ている人は想像力を働かせるものなので、細部に至るまでしっかりと役としてそこに立っていなければいけないと思っています」

探求して面白がって年を重ねていきたい

俳優は体が資本。私生活では健康のために普段からなるべく自炊を心がけているという。
「栄養バランスが偏らないように考えて、季節の野菜や不足していると感じるものを意識的にとるようにしています。最近はキャベツと玉ねぎにハチミツと酢を入れて、酢漬けに。それを保存容器に入れたものが今、冷蔵庫に3つくらい入っています。肉料理に入れると、夏でも重たくなくて食が進むんです」

もしかして、料理男子?
「それ、狙ってます(笑)。得意料理は自分ではわからないけれど、以前、冷蔵庫の余りものでパスタを作ったときはちょっと自信がつきました。それまでは何か作ろうと思ったら食材を買いに行っていたんですけど、応用がきくようになっている自分に気がついて、これは料理好きと言ってもいいんじゃないかって」

イケメンのうえに料理上手だなんて! こうなれば中村さんの素顔をもっと知りたいと、座右の銘を尋ねてみると、なぜか先輩俳優の名前が飛び出した。
「古田新太さんが『よくかめば何でも食べられる』と言っていました(笑)。古田さんが大学時代、同級生を驚かせようと思ってバッタを食べたそうです。でも、それって生きていくうえでひとつの真理ではあるなと思うんですよ。しんどいことだろうと、うまくいかないことだろうと、食わざるをえないものがあるんだとしたら、ちゃんとかんでのみ込めば苦くても栄養素にはなる、みたいな。だからというわけじゃないけど、僕はいろんなことをできる限り面白がろうと思って生きています」

そう言われてみると、なるほど、深い言葉かもしれない。
「それは僕のフィルターのおかげ。古田さんはただのヤバい人です(笑)」

現在35歳。これから先、どんなふうに年を重ねていきたいと考えているのだろうか。
「このままふざけたテンションで生きられれば楽しいなと思っています。僕が楽しいと感じるのは、『何だコレ?』という疑問と、簡単にはできないことへの好奇心が出発点。新たに知ったり、トライして失敗したり、こうやればうまくいくと発見したり。常に何かを探求して、面白がりながら生きていきたいですね」

profile
中村倫也
なかむら・ともや●1986年、東京都生まれ。2005年、俳優デビュー。以来、数多くの映画、ドラマ、舞台に出演。近作に映画『ハケンアニメ!』、ドラマ「珈琲いかがでしょう」「石子と羽男−そんなコトで訴えます?−」など。待機作には「仮面ライダーBLACK SUN」(10月28日配信スタート)がある。雑誌『ダ・ヴィンチ』にて「中村倫也のやんごとなき雑炊」連載中。

MUSICAL『ルードヴィヒ〜Beethoven The Piano〜』 

聴力を失い絶望の中、青年ルードヴィヒ(中村倫也)が死と向き合っていた夜、見知らぬ女性マリー(木下晴香)が幼い少年ウォルターを連れて現れる。マリーはすべてが終わったと思っていた彼に、別の世界の扉を開けて去っていく。新しい世界で、新たな出会いに向き合おうとするルードヴィヒ。それが新たな悲劇の始まりに……。

【出演】中村倫也、木下晴香、木暮真一郎、高畑遼大/大廣アンナ(Wキャスト)、福士誠治
【上演台本・演出】河原雅彦 【訳詞】森 雪之丞
●東京公演/東京芸術劇場プレイハウス 10月29日〜11月13日
●大阪公演/梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 11月16日〜21日
●金沢公演/北國新聞赤羽ホール 11月25日、26日
●仙台公演/電力ホール 11月29日、30日

詳細はこちら

ジャケット8万8000円/meagratia(Sian PR☎︎03-6662-5525) パンツ5万600円/DRESSE DUNDRESSED(PR01.☎︎03-6379-1214) その他/スタイリスト私物

撮影/園田昭彦 スタイリング/戸倉祥仁(holy.) ヘア&メイク/松田 陵(Y'sC) 取材・文/本木頼子



※この記事は「ゆうゆう」2022年11月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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