韓国リメイク版「愛していると言ってくれ」。大人の恋の物語はどこに向かう? 13~16話【韓国ドラマ】
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marumi
1995年に放送された「愛していると言ってくれ」(脚本:北川悦吏子)。豊川悦司と常磐貴子の珠玉のラブストーリーに夢中になったマチュア世代のみなさんは多いことでしょう。この大ヒット作品の韓国リメイク版がディズニープラスで独占配信中です。チョン・ウソンとシン・ヒョンビンが演じる大人の恋の描写。全16話の作品の13〜16話のレビューをお届けします。
※ネタバレにご注意ください
★9〜12話のレビューはこちら★
韓国リメイク版「愛していると言ってくれ」。2人の映像が絵画を見ているかのようでひたすら美しい9~12話レビュー【韓国ドラマ】
静かなドラマだった。スケッチブックで筆談するときも、手話で会話するときも、モウン(シン・ヒョンビン)の手のひらにジヌ(チョン・ウソン)が指で文字をなぞるときも、ジヌの広い背中にモウンが指でゆっくり思いを伝えるときも……そこには音がなかった。
モウンが「何も聞こえないって、どんな気分なの?」と尋ねたとき、ジヌが答えた「とても深い海の底」って、きっとこんな感じなんだろうと思わせてくれる。ドラマを観ている間だけは、ジヌが生きる“音のない世界”に私たちもごく自然に入っていけた。こんな感覚を味わえたドラマは、これまでになかった気がする。
しかも、心に残るジヌの独白の数々。チョン・ウソンの穏やかな低音ヴォイスの語りが沁みる。思いが丁寧に言語化されていて、セリフの合間にこれほどいろいろなことを考えさせられたドラマも初めてだった。
物語はラストに向け、2人の別れへと舵を切っていく。モウンがジヌの元カノ・ソギョン(キム・ジヒョン)から、昔、ジヌが寝ぼけて「ありがとう」「理解してくれて」と言葉を発したという告白を聞くのだ。モウンが一度も聞いたことのない、そしてどうしても聞きかったジヌの声、そして言葉。それを聞いた人がいた。ショックを受けたモウンは、あんなに努力して覚えた手話を、ジヌの前で使わなくなっていく。
大人の恋だからこそ、それぞれに連れてくる過去はたくさんあって当然だ。しかも、耳が聞こえないジヌと、聞こえるモウンだからこそ、「もっと率直に伝えれば」「話し合えばいいのに」とどれほどもどかしく感じたことか。でも、相手を気づかい、傷つけまいとしてすれ違う不器用な2人に、ある日、限界が訪れる。
ともに過ごすある夜。ジヌがふと起動した携帯の音声認識アプリが、モウンの「イライラする……」という独り言を拾ってしまう。音のない世界に生きるジヌが、愛する人の口からいちばん聞きたくなかった声を、目にしてしまった瞬間だ。
聞こえるとは、ときにこれほど残酷な仕打ちをするものか。図らずも、ソギョンが自分たちの過去を振り返ってジヌにつぶやいた「大きな違いが、愛が始まる理由になる。それと同時に、別れを決定づける理由にもなる」という言葉は、モウンとジヌにとっても現実になってしまった。
たびたび愛を語らった公園にモウンを呼び出し、ジヌは別れを切り出す。「人を愛する気持ちを失っていた僕に歩み寄ってきてくれてありがとう」「君のおかげでこれからの人生を自分らしく歩んでいけそうな気がする」—— 一度も振り返ることなく、廃線の軌道に沿ってジヌはまっすぐ歩み去っていく。モウンも追いかけることはしなかった。
30年近く前に日本で放送されたオリジナルとの大きな違いが2点あった。