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【要約小説】名作のあらすじを読もう!

横光利一の『汚ない家』あらすじ紹介。関東大震災後の貧困生活を描いた物語。貧しさの中の豊かさ、驚きの生活哲学とは?

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ゆうゆうtime編集部

横光利一の小説『汚ない家』は、震災後の東京の一角で描かれる主人公の貧困生活を通じて、ユーモアと皮肉が織り交ぜられた物語です。この短編は、貧しいながらもユニークな価値観を持つ主人公の視点から、人間社会や暮らしの本質を垣間見せてくれます。

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地震がもたらした生活の激変

物語の始まりは、関東大震災の後、主人公が住む家を失うところから始まります。久しぶりに訪れた自宅には、見知らぬ他人が住み着いており、主人公は途方に暮れます。その後、彼は洋服屋の汚れた二階に移り住むものの、大変な劣悪な環境に直面します。そんな中、文筆家の菊池師匠が彼の新居を訪れ、「君の家を書いた」と伝えるエピソードが、作品に不思議な味を加えます。一見、悲惨な状況もどこか滑稽に描かれる横光利一らしいユーモアが光ります。

汚い家での暮らしがもたらす気付き

新しい住まいは、貧民窟そのものでした。天井からはほこりが落ち、壁は紙一枚で隔てられた程度。隣家のいびきさえも聞こえるという環境にもかかわらず、主人公はその特殊な状況をユーモアを交えて語り続けます。特に印象的なのは、貧しい暮らしがもたらす「幻想」の豊かさについて触れる部分。貧乏街の中のささやかな美しさ、一鉢の植木が生活に与える新鮮な喜びなど、主人公の中では想像力が花開いています。

訪問者への複雑な心情と自己分析

物語の後半では、汚い家を訪れる人々への主人公の気遣いや葛藤が描かれます。訪問者は、ここを訪れることになんの誇りも感じないといい、主人公は彼らを気の毒に思うと同時に自らのズボラな性格にも向き合います。これらの描写はコミカルでありながら、どこか現代にも通じる人間関係の悩みや、自分自身の怠惰さへの鋭い視線が感じられます。

貧困と生活の哲学

物語全体を通して、「貧困」というテーマをポジティブにもネガティブにも捉えつつ、どちらかに偏ることなく描く横光利一の筆力が際立っています。最後に引用される英語の一節では、「良心は生活に負担を強いる」と語り、物質的な不足が精神的な自由さを得る機会を与えるような視点が表現されています。この深い洞察に、読者は思わずハッとさせられるでしょう。

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汚ない家

横光利一(著)
青空文庫(刊)
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