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岡本かの子の『老主の一時期』あらすじ紹介。富と地位を手に入れた老商人が、家族の不幸によって、再生を目指す物語
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ゆうゆうtime編集部
岡本かの子の『老主の一時期』(ろうしゅのいちじき)は、巨万の富を築き上げた老商人が、家族の不幸をきっかけに心の葛藤と再生を模索する物語。現実から逃避し宗教と理想に頼る姿が繊細に描かれています。その深みをぜひご堪能ください。
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主人公の宗右衛門は、一代で膨大な富を築き、江戸の諸大名の御用商人として成功を収めた老商人。しかし、彼の家庭に悲劇が訪れます。二人の美しい娘、お小夜とお里が相次いで急性リウマチにより脚を不自由にし、妻のお辻もそれを苦に心臓病で急逝しました。家族の不幸が重なり、富と権勢に満ちた彼の人生は一気に辛く暗いものに変わります。
宗教への没入と葛藤
宗右衛門は、失意の中で妻を弔う寺を訪れるようになり、次第にそこの老師への信頼を深め、仏教的な教えに救いを求めます。「因果応報」という教えを受け、自分の過去の行いが娘たちの不幸を招いたのではと考え始めます。一方で、彼は頑強な性格ゆえにその言葉をすぐには受け入れられず、苦悩し葛藤します。
現実からの逃避、妄執の迷宮
屋敷から寺の隠居所に移り住んだ宗右衛門は、寺にある菩薩の壁画に心を奪われます。その壁画がもつ官能的な美しさに強く惹かれ、彼の孤独感がさらに深まります。若い頃から女性への関心が薄かった彼が、老いを迎えた現在、限りない哀しみとともに未知の感情に翻弄される姿が痛々しく描かれます。
回帰と再生の道
宗右衛門は老師の助言を得て、自ら現実と向き合う決断をします。不遇の娘たちに寄り添い、家業に復帰することで、少しずつ新たな生活を築いていきました。その過程で新しい妻を迎え、家族の均衡を取り戻し、娘たちと共に再出発を模索します。そして、宗右衛門が手がけた寺の花園も、ひとつの象徴として調和と再生を教えてくれます。
まとめ
『老主の一時期』は、富と地位を手に入れた老商人が、家族の不幸によって己の過去や矛盾に向き合い、人間としての再生を目指す物語です。岡本かの子の作品らしく、主人公の内面の葛藤が繊細に描かれ、その後の行動が観念的な理想を現実にどう適応させるかを示唆します。深い倫理観や仏教的テーマを取り入れつつ、人間の心情の複雑さと哀愁が共感を呼び起こします。徹底的な心理描写に惹き込まれ、現実と理想の狭間で揺れる人生のドラマを存分に堪能できる一冊です。
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