【要約小説】名作のあらすじを読もう！
小林多喜二の『一九二八年三月十五日』あらすじ紹介。昭和初期、時代の不平等と家族の絆の強さがわかる物語
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ゆうゆうtime編集部
小林多喜二の『一九二八年三月十五日』は、プロレタリア文学の中でも一際輝く象徴的な作品。社会の不条理と闘う人々の姿を描きながら、それでも生き抜こうとする彼らと家族の苦悩が心を打ちます。
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この物語の登場人物である、お惠は夫・龍吉が社会運動や組合活動に奔走する中、家庭を支える存在です。自身もその一部を理解しつつも、龍吉が規制や捜索対象となるたび、不安に襲われ、庶民としての感覚と運動の大義の間で揺れ動きます。夫の活動に対して誇らしい思いも持ち得ますが、一方で娘の幸子の未来や家庭の安定を失う危機にも悩む難しさが描かれています。
組合と警察、対立の深刻さに圧倒される日常
作品の舞台は、労働組合やその周辺で交わされる活動家同士の議論や行動、そして彼らを取り巻く厳しい社会状況です。警察の突入や逮捕劇によって、日々が揺るがされる日常を、家庭の視点から切り取るのがこの物語の特徴の一つです。特に子供の視点から見た父親の逮捕劇が、読者に衝撃をもたらします。
登場人物たちに見る人間模様と強い団結
渡や龍吉など、組合員たちは闘争だけでなく、警察による過酷な取り調べ、共鳴する強さと葛藤も描かれています。彼ら一人一人の個性や信念が、物語の分厚さを強調しています。同時に、彼らが示す「団結」の意識こそが、プロレタリア運動の核心であり、描写にも深みを加えているのです。
運動の中心でもがくインテリたち
佐多や龍吉ら「インテリ」は労働者とは違う背景を持ちながらも、運動に参加する理由があります。しかし、その優位性が彼らを特別視する警察と、労働者との間で様々な摩擦を生み、それが苦悩として現れます。この個人と団体の葛藤は、より大きな問題を読者に問いかけるものです。
家庭の中で見られる矛盾と愛情
最後に、お惠の家族としての悩みや愛情もクローズアップされます。運動に専念する夫を支えつつ、日常の生活や幸子の将来を気遣うその姿描写は、家庭を守る母・妻としての女性の視点を鮮やかに映し出しています。社会変革への運動と家庭のきずなを通してその矛盾が深く語られます。
まとめ
『一九二八年三月十五日』は、社会問題が色濃く反映される労働者階級の物語を中心に、家族の視点から社会運動の現実を描き出します。小林多喜二は、時代の不平等を訴える中で、労働者とその家族が抱える痛みや強さ、そして相反する感情を緻密に描写しました。この物語を通じて、社会運動の核心に迫る貴重な瞬間が紐解かれます。一歩踏み出さなくては変えられない現実。その中で家族が抱える愛情深いリアリティに感動させられる作品です。それにより、今日の私たちにも問いかけられる不平等や団結の大切さが心に残ります。
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一九二八年三月十五日
小林多喜二（著）
青空文庫（刊）
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