【要約小説】名作のあらすじを読もう!
久生十蘭の『黄泉から』あらすじ紹介。ビジネスマンとフランス人学者の出会いが巻き起こす生と死、過去と未来の交錯
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ゆうゆうtime編集部
久生十蘭(ひさおじゅうらん)の『黄泉から』(よみから)は、生きる者と死者の境界を超えた魂の交流、戦争に翻弄された人々の記憶、そして愛の形を描いた文学作品。読み解くほどに深まる哀愁と救済の物語です。
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この物語は新橋駅のホームから始まります。主人公の魚返(おがえり)光太郎は、美術仲介業に携わりながら現代的で冷淡なビジネスマンとして生きています。その彼の前に現れるのが長年日本に住むフランス人学者、ルダン氏。彼が戦争で亡くなった弟子たちの霊を迎えるために墓参りをするという話を語り始めます。この不思議な設定が、光太郎を過去の記憶や死者とのつながりへと誘います。
戦没者の新盆と心の目覚め
次第に光太郎は自身の過去に帰還します。ニューギニアで戦争に巻き込まれて亡くなった従妹おけいの思い出が浮かび上がり、亡き彼女とのつながり、そして自身の冷淡さへの後悔が広がります。彼にとって、おけいは忘れられた存在だったはず。しかし、ルダン氏の言葉や戦後日本の生命力を感じる修羅場のような市場の喧騒の中で、彼はかけがえのない人間関係を再認識し始めます。
おけいの最期と響き渡る亡霊の声
そんな中、光太郎のもとに「おけいとニューギニアで過ごした」という謎の女性、伊草千代が訪問します。彼女は光太郎におけいのニューギニアでの日々や最期の様子を詳細に語ります。異境の地で生まれる琴の音色、降り注ぐ命のような雪――その雪が実はカゲロウの大群だったという儚くも壮絶なエピソードが、読者を引きつけます。そして、彼女の言葉から光太郎は、亡きおけいの深い愛情と、自分に向けられていた無限の信頼を知らされます。
未来への希望とおけいの願い
おけいの友人である千代の存在が、おけいの遺志そのものとして光太郎の目の前に現れたと理解する光太郎。この娘は、おけいが「お嫁さんに推薦したい」と語っていた友人だったのです。彼女の純粋な魅力が、光太郎に新たな希望をもたらします。提灯を持ちながら光太郎は千代と向かい合い、おけいに対する贖罪と感謝を込めて未来を見つめ直す決意を固めていきます。
まとめ
久生十蘭の『黄泉から』は、生と死、過去と未来が交錯する場面で展開され、戦争の影響を受けた人々の哀愁を描きます。光太郎の変化と、おけいの最期に秘められた感動的なエピソードは、読者の心に深い印象を残します。また、人間関係の絆や過去の行動に対する反省が、物語全体に温かい人間味を与えています。読み進めるうちに、命や愛の尊さを強く感じさせる文学的傑作と言えるでしょう。戦争による死者の記憶を抱える多くの人々に、自身の物語として響くこと間違いありません。
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