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田幸和歌子の「今日も朝ドラ!」

【舞いあがれ!】の構成の巧さ。みんなが応援したくなる、朝ドラのヒロイン像の作られ方

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田幸和歌子

舞ちゃんはどうなる⁉︎ わくわくしながら朝ドラを見るのが1日の始まりの習慣になっている人、多いですよね。数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。より深く、朝ドラの世界へ!

東大阪で生まれたヒロイン岩倉舞(福原)が、長崎・五島列島に住む祖母や様々な人との絆を育みながら、パイロットとして空を飛ぶ夢に向かっていくNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の5週目。

テストフライトで怪我を負った由良冬子(吉谷彩子)。由良と体型の近い舞がパイロットになる案も出るが、設計担当の刈谷博文(高杉真宙)は猛反対、由良に怪我を負わせた責任も感じ、なにわバードマンを去ってしまう。

そんな中、舞はパイロットになることを申し出るが、部長の鶴田葵(足立英)は返事を保留。それでも舞はロードバイクを購入し、トレーニングを始める。

部員たちは舞がパイロットになることを認め、舞の体型に合わせて操縦席を作ろうと模索するが、なかなかうまくいかない。すると、部員たちが設計に手を加えようとしていることを知った刈谷は激怒し、部室に現れ、部員たちと口論に。しかし、それは無事スワン号を飛ばしたいという熱い思いからくる衝突で、そこで刈谷が部に復帰。

一方、舞は過酷なトレーニングとダイエットを課されるが、あと一歩のところで体重が減らなくなり、体力測定は目標値の半分にも届かず。そんな舞の実力に合わせ、刈谷は「190W 50分」漕げることから「180W 60分」に設定の負荷を落としつつも「記録」を狙う方向に修正する。

しかし、舞はスランプから抜け出せずにいたが、そこに現れたのが、由良だった。由良はトレーニングを兼ねて、記録飛行をする琵琶湖へ行くことを提案。舞がみんなの努力を台無しにしてしまうのではないかと不安を漏らすと、「しんどいのは当たり前や。自分、空飛ぶんやろ。飛行機は向かい風を受けて、たかーく飛ぶんや」と励ます。

そしていよいよテストフライト当日、飛行機は舞いあがり……と一気に振り返ったが、今週は「なにわバードマン」たちの熱い思いや由良の優しさ、過酷な日々から、舞というヒロインが見えてくる週でもあった。

ただでさえ危険が伴うパイロット。それも、あれだけ身体能力が高く過酷なトレーニングを積んできた由良が失敗し、怪我を負う姿を目にして、怖くないはずがない。さらにしんどいのは、みんなの思いを背負って飛ぶというプレッシャーだ。しかし、ここで舞の五島での経験が生きてくる。

かつて大事なばらもん凧を飛ばすとき、失敗したらと考えると怖くて仕方なかった舞が、自分で飛ばすことができた経験は、今の舞の強さになっている。

思えば、部室を初めて訪ねたときに主翼に見惚れ、手を触れようとして壊してしまった舞をきつく叱り、その後も不愛想で怖そうに見えた由良に、舞は全く怯むことなく、媚びるでもなく、純粋に憧れを抱き、自分から話しかけて行った。これも、会った瞬間には仏頂面で怖かった祥子ばんば(高畑淳子)の温かさを知っているからだろう。

全く喋らない「永遠の3回生」“空さん”(新名基浩)に話しかけたのも、おそらく空さんがどれだけ人力飛行機を作ってきたのか、飛行機好きゆえにその経験に興味を抱いたから。ヒロイン特有の高すぎる自己肯定感により、“ぼっち”の変わり者に上から話しかけてあげるのとはわけが違う。だからこそ、舞がパイロットになることに空さんは誰より早く「賛成!」と手を挙げたのだ。

過酷なトレーニングとダイエットで疲弊しているときも、舞は不機嫌な顔もせず、両親が食事をしているときにも、本当は食べ物を見るだけで辛いはずなのに、食卓にきちんと同席する。そして、自分が口にするのはプロテインだけなのに、きちんと手を合わせて「いただきます」「ごちそうさま」を言う。本当にいい子だ。

おまけに、ロードバイクを奮発して買ったこともあり、トレーニングと授業の傍ら、バイトも頑張って続けている。そして、スランプに苦しむとき、由良の顔を見て声を聞いた瞬間に、心から安堵した表情を見せる。こんな子、可愛くないはずがない。

周りの人々を丁寧に描くことで、みんなに愛され、みんなが応援したくなるヒロイン像が浮かび上がる、非常に巧い構成だ。

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