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大人の心に響くと評判の、ヨシタケシンスケさんの最新作。3つの物語に描かれていることとは?

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ゆうゆう編集部

理解できなかったとしても「何か」が心に残れば

大人の心に響くと評判の『メメンとモリ』だが、読者の年齢や世代を想定して書いたものではないという。

「ただ、小さな子どもが読んだとき、まだ理解できなくて、きょとんとしてしまうかもしれないですね。でも、それは決して悪いことではないと思うんです。謎が残ったり、もやもやを引きずったり、軽くがっかりしてしまったり。むしろ、そういう本をつくりたいと思っているので」

よくも悪くも、心の片隅にずっと引っかかっていれば、絵本ならではの洗練されたビジュアルも相まって、またいつか手に取りたくなる。そして再読したとき、以前は理解できなかったエピソードや作者の問いかけが、すーっと心に入ってくる。加えて、新たな気づきや発見も。

「絵本の魅力は、人生で二度出合えること。子どものときに読んで、大人になってからまた読むと、まったく違う顔を覗かせてくれるんです」

それは私たちにも当てはまる。たとえば第1話の、メメンのこの言葉。

「『ずっとそこにある』ってことよりも、『いっしょに何かをした』ってことのほうが大事じゃない?」

大切な誰かを失ったり、何かを手放したり。そんな経験が増えるであろう5年後、10年後に再び読んだとしたらどうだろう。自分へのメッセージのように感じて、心の杖となるかもしれない。

これからは「老い」との向き合い方も描きたい

自分が子どもの頃に読んでみたかった絵本をつくる──それがデビュー以来、ヨシタケさんの変わらぬ思いだ。さらにもう1つ、「将来の自分に必要な絵本をつくりたい」とも思うようになったという。

「老いと向き合っていくことが、これからの僕自身のテーマだし、すべての人に共通の課題。どう受け入れて、何をあきらめればいいのか、考え方のレパートリーを増やして、今後の作品に生かしたいですね」

PROFILE
ヨシタケシンスケ

よしたけ・しんすけ●1973年、神奈川県生まれ。
筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。
絵本デビュー作『りんごかもしれない』で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位に。
日常のひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、イラストエッセイなど多岐にわたり作品を発表。

※この記事は「ゆうゆう」2023年8月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。


取材・文/猪股史子(FT企画)

ゆうゆう2023年8月号

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