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吉田秋生の漫画『ラヴァーズ・キス』を一気読み。「前を向いて生きていく力」に心を打たれる

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Anmitu

学生のとき夢中になって読んだ漫画は、どんな作品でしょう。時を経て今、久しぶりにその漫画を一気読みしたら、どんな感想をもつのでしょう。吉田秋生さんの作品が好き、というマチュア世代ライターが久しぶりに吉田作品にふれた感動をお届けします。
※ネタバレにご注意ください。

人生の転機は、誰にも必ず訪れる。仕事や大金、あるいは愛や心、健康や命などを失ったとき、もしくは手にしたときではないだろうか。「それ」は、ほぼ100%予期できず、ある日突然ふりかかってくる(ように感じる)。

吉田秋生の漫画『ラヴァーズ・キス』。
この物語は、6人の高校生が「愛する」こととの出あいによって経験する人生の転機の物語である。

藤井朋章(ふじい・ともあき)は、大きな産婦人科医の一人息子。中学時代はだれもが認める優等生。スポーツ万能でハンサムでスタイルがよく、性格も明るく、社交的でみんなに好かれていた。ところが、ある頃より変わった。茶髪になり、ピアスを空け、学力は低下しバスケ部もやめた。

高校生になると実家を出て一人暮らしを始め、何人もの女をナンパしてヤったとか、妊娠させて父親の病院でおろさせたなどの悪い噂が立っていた。

いつもどこか遠くを見ている、心をどこかに置いてきてしまったような眼差しは、何かにおびえ、何かにあらがい、何かを断ち切ろうともがき自分を閉ざしている。——何故なのか……。

川奈里伽子(かわな・りかこ)は、幼少の頃より素直で大人のいう事をよく聞く、かわいらしい、かげりのない人気もの。だが、小学生のとき、好きだった先生に悪戯をされた過去を持ち、その時の恐怖がトラウマとなり、何事も拒否できずにいた。自分の心と体をつつむように愛し、溶かしあえる人との出あいを求めては男を変えることで、偽りなく生きる自分を取り戻せるかもしれない、と傷を深める行為を繰り返していた。

そんな高校生活の春、里伽子と朋章は出あう。酔っ払い、朋章の部屋で一晩過ごした朝、「川奈、自分をあまり粗末に扱うなよ」「男は消耗品だけど、女はそうじゃないからさ」。朋章は里伽子にそれだけを告げ、バイトに出かける。これまでの男とは何かが違う朋章に、自分の心の傷を打ち明ける里伽子だった。

涙ながらに話す里伽子に「どんなに辛くても自分で決着をつけなきゃならない」という朋章。その言葉に、素直な自分の心を取り戻す術を悟るのだった。

そして、この物語は、この2人が結ばれたところから始まっていく。

現実世界がそうであるように、2人だけで世界(物語)は完結しない。

著者の私物。吉田秋生『ラヴァーズ・キス』 『別冊少女コミック』(小学館)にて1995年4月号から1996年2月号まで隔月にて全6回で連載。 書籍初版は1995年12月、フラワーコミックス(小学館)より全2巻で発行。のち、小学館文庫(小学館)より全1巻で1999年9月発行。フラワーコミックス、新装版(小学館)より全1巻で2015年5月発行。

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