知ってる?賞味期限の近い商品から手にとると、「おいしい」につながる。グランドフードホールの岩城紀子さんがアドバイス
公開日
更新日
岩城紀子
近所の個人商店で買い物しよう
お米屋さんだけでなく、そのほかの商品も小さな個人商店で買い物してほしいと私は思っています。
みなさんの家の近くに、商店街はありますか? 昔あったけれど、いまはほとんど店が開いていない、というところも多いかもしれませんね。
私の祖母がまだ元気だった頃、よくいっしょに買い物に行きました。祖母は買い物かごを持ち、商店街のお店を一軒一軒回るのです。どのお店でも「今日は何がええの?」と聞き、店のおばちゃんとのおしゃべりが始まります。「今日はれんこんのええのがあるよ」「それ、どうやって食べるの?」「今日のはね、煮るんやないよ。焼くんよ。糸引くぐらいねっとりするから」
そんな会話をあちこちでするので、時間がかかってしょうがないんです。でも、その日の夕飯に出てきたれんこんのはさみ焼きのおいしかったこと。確かに糸が引くようにねっとり&ジューシーなのです。
いま思えば、あの頃の野菜は時期によって状態がずいぶん違っていたのだと思います。ひと口に「旬」と言いますが、「走り」「盛り」「名残」と3段階あって、「走りだから、煮るより揚げるほうがおいしい」など、野菜の専門家である八百屋さんからアドバイスをもらう意味があったのでしょう。
いまでは厳格に温度管理された中で育つ野菜が多いので、そんなブレは少ないかもしれません。でも、ご近所の商店はその食品の専門家です。調理方法がわからない、どのくらい日持ちするの?など、疑問に思っていることを聞けば教えてくれますし、お得意さんになればいろんな融通もきかせてくれます。
私は近所の肉屋さんとはSNSでつながっています。深夜に「うっかりしてた! 明日、うちで焼き肉パーティーするんやけど、ロースとカルビを5キロお願い!」などと迷惑なメッセージを送ったりもするのですが、ありがたいことにちゃんと用意しておいてくれます。
お店の人とSNSでつながっているというと意外に思われるかもしれませんが、現代を生きる私たちは忙しい身。買い物かごを持って立ち話している時間はなかなかありません。お店の若旦那に「時間がなくてなかなか電話できないんです」と言ったら、「じゃあ連絡はこっちで」とIDを教えてくれました。いまならこんなやりとりで、個店での買い物を楽しむこともできるのではないでしょうか。
ヨーロッパには「Buying from artisans(職人から物を買え)」という言葉があります。ハムはハム屋さんで、パンはパン屋さんで買うべきなのだと、幼いころから教えられるのだそうです。地域の職人さんを大切にしなければ、その店はなくなってしまうよ。技術は失われてしまうよ。そんなメッセージは、いまの日本にこそ必要なのかもしれないと思うのです。