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【大奥7話】美しく切ない純愛の物語 綱吉編が閉幕。吉保(倉科カナ)の思いは何処へ

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田幸和歌子

江戸時代の男女逆転の世界が描かれる、NHKドラマ10「大奥」。現在、NHKBS4KとNHKBSプレミアムで再放送中です。奇想天外なエンターテインメントに、毎週ひきこまれていく人も多いことでしょう。初放送時、数多くのドラマレビューを執筆するライター田幸和歌子さんに、NHK版「大奥」について語っていただいた記事をお届けします。
※ネタバレにご注意ください。

前回はこちら>>【大奥6話】NHK初のインティマシー・コーディネーター導入。仲里依紗と山本耕史が現代にも通じる深い悲しみを演じる

よしながふみ原作漫画×森下佳子脚本により、男女逆転劇の世界を描くNHKドラマ『大奥』の第7話が放送された。

美貌と知性を兼ね備え、「当代一の色狂い」と称された5代将軍綱吉/徳子(仲里依紗)の深い悲しみが描かれた前回。

一人娘を失い、悲しみに塞ぐ綱吉に、世継ぎを産むことのみを求める父・桂昌院(竜雷太)は、懐妊しない理由が自分の若い頃の殺生だと僧に言われると、「生類憐みの令」を出す。

このあたりから綱吉も桂昌院も、壊れていく様が切ない。綱吉はますます奔放に振る舞うが、懐妊の気配はないまま閉経を迎える。それを桂昌院に伝え、子を授かる可能性はなくなったことを告げるが、桂昌院は「なおのこと神仏にあやかる他ない」と主張。「たった一つのお勤め(世継ぎを産むこと)も果たさんと投げ出すとは、恥ずかしくないのか」「わしは何のためにお前をもうけたんじゃ」と狂った主張を炸裂させる。

原作では閉経は桂昌院に伝えられていなかったが、知ってなお神仏にすがるというドラマ版のアレンジにより、桂昌院の「毒親」ぶりが強調され、見ていていたたまれなくなる。

生類憐みの令は、国民の不満を増大させ、赤穂事件も発生。しかし、希望の光が差したのは、綱吉が世継ぎ候補を探す中、紀州徳川家の徳川光貞が3人の娘を連れて来たときのこと。身分の低い父親の子だということから、1人だけ廊下に出されていた三女・信(清水香帆)を中に呼び入れた綱吉は、3人の娘に江戸の様子を尋ねる。綱吉を前に、美辞麗句を並べる姉に続き、信が語ったのは、モノの値が高くて困ると民が不平を漏らしていたこと。

さらに、綱吉が若い頃に使っていたかんざしを並べ、3人の娘たちに与えると言うと、つつましいものを選んだ一人目、少し欲張って複数選んだ二人目に続き、信は残り全てを所望する。なんとも大胆な答えだが、その理由は、家来に与えるためだった。

綱吉は、その心がけを褒めつつも、世継ぎをもうけるためには美しくなるよう、自分の身なりにも気を遣うよう諭すが、信は自分が美しい男に興味がないように、美しい女に興味がない男もいるはずと返す。

それを聞いた瞬間の綱吉の泣き出しそうな顔と笑い声、「思いつかぬ」「思ってもみぬ」という言葉に、胸が締め付けられそうになる。なぜなら、信が価値を見出すものこそ、学問を愛し、中身を磨く努力をしていた少女時代の綱吉(徳子)が父に「女は器量と愛嬌」と言われ、否定され、捨てさせられてきたものだったからだ。この信こそが、贅沢や無意味な古い慣習を嫌う、後の8代・徳川吉宗(冨永愛)であることに、ワクワクする。

しかし、以降も綱吉は桂昌院に縛られ続け、「大奥総取締役」の右衛門佐(山本耕史)に生類憐みの令を取り消すよう進言されても、父を裏切ることはできないと言う。右衛門佐は、桂昌院が将軍の父になるという欲得により綱吉に関わっていると指摘するが、綱吉は体を差し出さず男の頂点に立ちたいという野望のために綱吉を決して抱かない右衛門佐を責める。

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