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【大奥9話】三浦透子(家重)の芝居は凄まじい。大河『八代将軍吉宗』の中村梅雀の名演が重なった

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田幸和歌子

江戸時代の男女逆転の世界が描かれる、NHKドラマ10「大奥」。現在、NHKBS4KとNHKBSプレミアムで再放送中です。奇想天外なエンターテインメントに、毎週ひきこまれていく人も多いことでしょう。初放送時、数多くのドラマレビューを執筆するライター田幸和歌子さんに、NHK版「大奥」について語っていただいた記事をお届けします。
※ネタバレにご注意ください。

前回はこちら>>【大奥8話】吉宗(冨永愛)チームの有能感に痺れる。水野(中島裕翔)が見つけた手がかりで赤面疱瘡は解決に向かうか

よしながふみ原作漫画×森下佳子脚本により、男女逆転劇の世界を描くNHKドラマ『大奥』の第9話が放送された。

8代・徳川吉宗(冨永愛)は、赤面疱瘡を治す薬を作るべく、商人・進吉として暮らす「御内証の方」水野(中島裕翔)に各地の薬を探させる一方、無償で病人を診ていた医師・小川笙船(片桐はいり)との約束で「小石川養生所」を創設。そんな中、水野が赤面疱瘡を治す手掛かりとして「猿の肝」を見つけて来る。

折しも市中で赤面疱瘡が発生。まだ効能が定かでない薬を使うことに小川は躊躇するが、「責めは私が負う」と吉宗が明言。この状況はコロナ禍の現代と重なるだけに、自ら責任を負って民のために決断する為政者がいる江戸幕府8代目時代が羨ましく思える展開だ。

しかし、一時的に抑え込めたかに見えた赤面疱瘡は、コロナと同じく根絶は難しかった。吉宗は無力感に襲われつつも、小川と水野の奮闘を称えるが、2人はまだ諦めていなかった。

小川は赤面疱瘡が死に至る道筋を解明すべく、躯の検分を願い出て、水野は田島屋の蔵に眠る古い書物にあった異国の薬草を調べたいと言い、久通(貫地谷しほり)もそれを後押し。異国の書物が解禁となり、ここに蘭学が始まる。

そうした流れで、大奥に眠る異国の書も参考になるのではという杉下(風間俊介)の提案で、進吉(水野)が大奥に出入りできるように。かくして「御内証の方」として死んだはずの水野と杉下は再会。感動で泣いて抱き合う二人と、その様子を聞いて愉快そうに笑う吉宗との対比が描かれる。水野が大奥に戻ることは原作ではなかっただけに、ドラマオリジナルの微笑ましいエピソードだ。

こうして大奥に男の蘭学者が生まれ、世の中は平和に……と思いきや、次なる混乱は吉宗の跡取り問題だ。

そこで長女・家重として登場するのが、三浦透子。家重と言えば「言語不明瞭」「小便小僧」「暗愚」と揶揄された将軍で、大河ドラマ『八代将軍吉宗』で見せた中村梅雀の名演を覚えている視聴者は多い。忘れていた人も、登場シーンで脳性麻痺を思わせる顔のこわばりと言葉の覚束なさに、瞬時に蘇った人はいただろう。それにしても、三浦透子の芝居は凄まじい。

決して大仰な表現をするわけではない。しかし、自分の思うように喋ることができない苛立ちで小姓に当たり散らすワガママさ、酒色に溺れる弱さの裏には、痛切な劣等感と不安が感じられる。新たに小姓となった龍(當真あみ)は、将棋の相手をするが、「驚きました。家重さまはたいそう頭のキレる方」と舌を巻く。にもかかわらず口さがない世間の噂に、言い返すこともやり返すこともできない歯がゆさを思い、涙ぐむ龍。

しかし、家重は吉宗を前にし、利発な妹たちのようにうまく喋れず、失禁したことでひどく塞ぎこむ。自分が役立たずだと言い、「私なんて、この世におらぬほうが良い」と嘆く家重を見かねた龍は、吉宗にお目通りを願い出て、気落ちした家重を訪ねて欲しいと懇願する。

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