私らしく生きる 50代からの大人世代へ

人気記事ランキング 連載・特集

【ブギウギ】名作の良い香りを漂わせてスタート!男性アナウンサーが語りを務めるのはなんと17年ぶり!

公開日

更新日

田幸和歌子

ストーリーだけざっくり追うと、ご都合的でもある王道展開だろう。だからこそ、それを感じさせない役者・脚本・演出の力が見えてくる。

何しろ本作が初ドラマという澤井梨丘が圧倒的に良い。まず全てを納得させる歌唱力。滑舌も良ければ表情も良く、エネルギッシュで強い光を放つ一方で、ヒロインの元気さ・明るさゆえの無神経な「毒」もちゃんと持っている。タイ子に教えてもらい、初めて関心を抱いたのに、花咲の試験の面接で、生まれたときから花咲に行きたかったなどとのたまう調子良さも含めて、渡辺あや脚本×尾野真千子主演の不朽の名作『カーネーション』(2011年度下半期)の糸子をちょっと思い出してしまう。

それに、冒頭では華やかなスターであり、「未婚の母」の鈴子(趣里)が控室で赤ん坊を溺愛する姿が。そこに現れたのが、服部良一をモデルとした、草彅剛扮する羽鳥善一。ほんの一瞬、わずかなセリフのみの登場なのに、そこがエンターテインメントのカラフルな世界に様変わりする存在感には、本作の脚本家・足立紳とのタッグ作で、仲野太賀(松尾諭役)の兄を演じた『拾われた男 Lost Man found』(NHK BSプレミアム)を思い出してしまう。

また、本作に登場する、アホなことを言いながらなぜか毎日タダで風呂に入りに来る「アホのおっちゃん」(岡部たかし)を見ていると、足立紳と共にチーム脚本を手掛ける櫻井剛の『あなたのブツが、ここに』(2022年)が、大阪の芸能の世界を見ていると、八津弘幸脚本・杉咲花主演の朝ドラ『おちょやん』(2020年度下半期)が蘇ってくる。

また、本作の語りを務めるのは、高瀬耕造アナ。男性アナウンサーが語りを務めた作品と言えば、田辺聖子をモデルとした長川千佳子脚本×藤山直美主演の『芋たこなんきん』(2006年度下半期放送)の住田功一アナ以来、17年ぶり。「アホのおっちゃん」や「体冷やしたらあかん、熱々や」ばかり言っている医師(妹尾和夫)、当たらないと評判の易者(なだぎ武)など、賑やかで、ちょっとアホで、あったかい大阪の空気も『芋たこなんきん』に近いものを感じさせる。

シンプルなストーリー展開を個性的な人々の賑わいでカラフルに彩る『ブギウギ』。毎朝元気をもらえる作品になりそうだ。

PICK UP 編集部ピックアップ