ところで、登場人物1人1人を丁寧に描き込み、複数の人物の営みを並走させながら週ごとの植物と絡める緻密な『らんまん』に対し、『ブギウギ』は物語が主に単線で流れるため、シンプルでわかりやすいと感じる人もいれば、少し物足りないと感じる人もいるだろう。

例えば、解雇された新人や楽団員の名前や顔はほとんどの視聴者がわからないため、その痛みが響きにくい。一方、シンプルだからこそメインどころの役者の力量は存分に発揮されている。

圧倒的なのは、やはりスターオーラ抜群の蒼井優。厳しくも優しい橘を演じる翼和希のかっこよさとデレ可愛さ。

そして、誰より華奢で、まだ自分の個性を見つけられていないスズ子を演じる趣里の中に眠る溢れんばかりのエネルギー。ちなみに、子役時代(澤井梨丘)とは顔・雰囲気ばかりでなく、いっちょかみの反応速度が非常によく似ている。

梅丸の先輩方や林部長(橋本じゅん)、社長らの話に誰より速く反応し、大きな声をあげる自己肯定感の高さには、教室で先生の話にすかさず返答やツッコミをしていた子ども時代が思い出される。

また、ともすれば嫌な女になりかねないのに、愛嬌と痛快さを持ち合わせた白川を演じる清水くるみ。自分の中に想いも言葉も留めてしまいがちな不器用さと真面目さを持つ桜庭を演じる片山友希。

言葉はキツイが、実力もあれば誰より努力家でもあるストイックな秋山を演じる伊原六花。

梅丸の面々の魅力をど真ん中に据えた、役者同士のライブ感ある掛け合いは、むしろシンプルな物語が生み出したものか。

そんな中、梅丸のパフォーマンスには合わないスズ子の将来の「武器」も見え始めた第3週だった。