【ブギウギ】スズ子が恋に落ちた描写がなく戸惑ったが、おそらく一番わかっていないのはスズ子自身だろう
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田幸和歌子
しかし、ここで浮かび上がるのは、スズ子という人をここまで幼いままでいさせる、自己肯定感の高さだ。スズ子は両親に愛情たっぷりに育てられたものの、その両親は実の親でなく、産みの親はスズ子に会えなくなり、寂しい思いをしていたという出生の秘密を知った。憧れの先輩・大和礼子(蒼井優)が突然亡くなるという大きな悲しみも経験している。
驚くのは、20代半ばにして多くの悲しみ苦しみを知っているにもかかわらず、スズ子自身がそれを全く感じさせないほどに明るく、恋愛についてもあまりに幼く、少女の頃のままだということ。特に母・ツヤ(水川あさみ)の体調が悪いことを弟の手紙で知ったら、若くして亡くなった大和のことが頭をよぎり、不安で仕方なくなりそうなものなのに、スズ子はまだ事態を深刻視していない。だからこそ、自分の価値を引き抜き話で知ったことと、母の医療費のためにということを並べて、給与引き上げの交渉材料にする。
その楽観性や切り替えの力、幼さ、たくましさは、ツヤが「この子だけは死なせたらあかん」と過保護なまでに守り、愛情を注いできたことで得られたものだろう。
また、そうした全ての悲しみも苦しみも「ワテ」の中に取り込み、歌と踊りのパフォーマンスに昇華させるのが、福来スズ子なのだろう。それだけに、今後ますます悪化が予想されるツヤの病状が非常に心配な展開になってきた。
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