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「涙の女王」ウンソンの人格に憑依するキム・スヒョンの演技は鳥肌ものだった 11〜12話レビュー【韓国ドラマ】

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marumi

子や孫たちを救うために、祖父の選択は……

深夜、離婚後にヒョヌが一人暮らしをする部屋に戻った2人。ドアの暗証番号は“1031”。それは、生まれてくるはずだった子どもの出産予定日だった。それを知ったヘインの何とも言えない顔。2人の心にかかっていたロックも解除される音が聞こえるようだ。数字だけで2人の思いを表現する演出が秀逸だ。

だが、ヘインは病状の進行を自覚していた。ヒョヌに「次の段階になったときにあなたといたくない」「今は十分幸せだから、更に悪くなったら私から離れて」と懇願していたのだ。

翌日、龍頭里に戻る途中、美しい夕景の中で告白すると叶うという場所に車を停めたヒョヌは「復縁は負担だろうから、離婚を取り消すのはどう?」と指輪を渡す。だが、ヘインは「あなたは本物のヒョヌかしら? これが現実なの」と提案を拒み、車に駆け込む。涙を見せたくないヒョヌが背を向けた瞬間、ヘインも車の中で号泣する。こんなに泣くヘインを初めて見た。

愛しているからそばにいたいヒョヌ、愛しているからそばを離れなくてはと考えるヘイン。お互いの気持ちがわかっている分だけ、置かれている現実は残酷だ。

そして、2人が戻った龍頭里では、2つの“絆”が紡がれた。

1つは、ヘインの叔母ボムジュン(チョン・ジミョン)とヒョヌ父の友人ヨンソン(キム・ヨンミン/『愛の不時着』の耳野郎役)の出会い。愛人の言いなりになる父に「葬儀には出る」と捨て台詞を投げつけて訣別した後悔を語るボムジュンに、認知症の母を介護しながら質素に暮らすヨンソンは「幸せそうな人のポケットにも重い石が入っている。だから羨んだり、自分を責めたりしないで」と諭す。ヨンソンはまるで哲学者だ。

もう1つは、財閥乗っ取り騒動の渦中、大金と美術品を持って忽然と姿を消した妻ダヘ(イ・ジュビン)とスチョルの再会。ただ黙って妻を抱き締め、わが子ゴヌにやさしく触れるスチョルの愛情の深さが、この1カットで伝わってくる。しかも、ゴヌ役の子どものかわいすぎる名演技には驚かされる。

一致団結したヒョヌ組、仲間割れしそうなウンソン組。それぞれが血眼になって隠し財産を探す中、張本人のクイーンズ財閥元会長でヘインの祖父ホン・マンデ(キム・ガプス)は、意識不明から回復し始める。そして、愛人モ・スリ(イ・ミスク)が息子ウンソンに財閥を支配させるべく、自分を失墜させる画策をしたことにようやく気づく。

悪女モ・スリを法定後見人の座から引きずり下ろすには……。自分の過ちのせいで苦境に立たされている子や孫たちを救うには……。祖父の選択は、階段の上から自分が乗った車椅子を落とすことだった。家長として君臨し、家族の“絆”よりも、財閥家の格式やプライドを優先した罪を、自分の命をもって償おうとしたのだとしたら悲しすぎるし、隠し財産は行方不明のままだ。

いよいよ残り4話。海で溺れたヘインを助け、校庭で転んだヘインの膝に絆創膏を貼り、不具合なコピー機に当たるヘインを手助けし、急な雨に傘を貸し……。ヘインが困っているとヒョヌがあらわれ、そのたびに惹かれ合う。だから、ヘインがどれだけ「私から離れて」と望んでも、必ずヒョヌはヘインを助ける運命だ、と信じて、奇跡を待つ。

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