【池上彰】が「年金は絶対にもらえる」と断言する理由とは? 本来の年金の意味合いも解説
たびたび耳にする「年金破綻論」。果たして、将来はどうなるのでしょう? ジャーナリスト・池上彰さんの書籍『池上彰の未来予測 After 2040』より一部を抜粋し、お届けします。
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国が存続する以上、年金破綻は起きない
「年金破綻論」が定期的に取り沙汰されます。若い世代では、「年金はもらえなくなるんじゃないか」という不安を抱いている人たちが多くいます。
しかし、「年金はもらえます」と断言します。「年金がもらえないんじゃないか」ということは、すなわち「日本という国がなくなるんじゃないか」というのと同じ意味だということをぜひ知っておいてください。年金は国として日本国民に約束をしたことですから、国が存続する以上、年金は絶対払わざるを得ないのです。
ただし今の若者たちの世代も、これまでに年金を受け取った世代のようにたっぷりと年金をもらえるかというと、そうはならない可能性は高いでしょう。
私(1950年生まれ)よりも少し年上の世代である「団塊の世代(主に47~49年生まれ)」は、自分がこれまでに納めてきた年金保険料以上の年金を受け取っています。ただ今後は年齢が下がるにつれ、受け取れる年金額も少しずつ下がっていく予定になっています。今の40歳くらいの人たちは平均寿命の年齢まで生きたとして、納めた額の分と同額か、国が存続する以上、年金破綻は起きないか、それよりも少ない額を受け取ることになる見込みだと試算されています。
「損をするのか」と怒りたくなる気持ちもわかりますが、ここで念頭に置いてほしいことは、年金は年金「保険料」という名のとおり、「保険」なのだということです。保険とは、いざというときのリスクに備えるものです。
たとえば健康保険は、病気やケガになったときに3割負担で治療が受けられるもので、だからこそ私たちは毎月保険料を納めています。しかし「保険料を納めていて元を取らなきゃいけないから、病気やケガになりたい」と思う人はいませんよね。
介護保険も、将来介護が必要になったときのリスクに備えて納めているものです。とはいえ「40歳から介護保険料を納めているわけだから、将来寝たきりになって介護保険を受けなきゃ損だよね」とは、誰も思わないはずです。
つまり年金も、本来はリスクに備えるためのものなのです。このリスクとは何かというと、ずばり「長生きのリスク」です。長寿というめでたいことをリスクと言うのは嫌ですが、そういう制度設計だというわけです。長生きしたけれど、高齢になって仕事もなく、十分な資産がない。そういうリスクに備えて、年金が出るのだということです。
そのため本来、所得の高い人、資産をたくさん持っている人など、年金をもらえなくても生活できる人は年金を受け取らなくていいはずなのです。将来的には年金本来の意味に立ち返って、日本の年金は所得の高い人や資産の多い人には支給しなくなる可能性はあります。
現在も、年金受給資格を得ていても給与所得が多い人は、月6万円の老齢基礎年金のみを受け取り、それ以外の老齢厚生年金は一部のみの支給、または支給停止となっています。老齢基礎年金も、収入のある人には支給を停止すればいいじゃないかという議論が出ています。資産を持っている人への年金の支給停止という案は、今までは資産を把握する方法がなかったために現実的ではありませんでした。けれどもマイナンバーへの銀行口座の紐づけが進みつつあるため、今後は可能になっていく見込みがあります。
現時点では政府は国民の所得しか掌握できていませんが、これから銀行預金などの資産も政府が追跡できるようになります。すると「一定の資産がある人に関しては年金を支給しません」ということが、将来的に検討されるようになると思います。
年金はあくまで保険なのだから、「年金が受け取れなくて損だ」ではなく、「年金に頼らなくても生活ができるというのは幸せなことなんだから、もらわなくてもいい」と発想を転換すべきだという議論がこれから活発になっていくはずです。