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【要約小説】名作のあらすじを読もう!

室生犀星の『音楽時計』あらすじ紹介。生と死のはざまで揺れる人間の感情、美しくあろうとする心とは?

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ゆうゆうtime編集部

室生犀星(むろうさいせい)の短編小説『音楽時計』は、儚げな生命の灯火と、その周囲に宿る小さな希望や温もりを繊細に描いた感動的な物語。雨音とともに流れるメロディ、あなたも耳を傾けてみませんか?

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室生犀星が描く、愛と哀しみの交錯する世界

室生犀星の『音楽時計』は、病に苦しむ少女の儚い命を穏やかに描く短編小説です。音楽時計というシンボルを通じて、生命の終焉に対する少女の思いと、それを支える周囲の人々の愛と哀しみが深く表現されています。この物語を読むと、人の生と死、そしてその過程で見出される小さな希望や絆について自然と考えさせられます。雨音、メロディ、静寂が織りなす世界をぜひ堪能してください。

音楽時計と病床の少女

静寂に包まれた古い家。そこに鳴り響くのは音楽時計の明るいメロディ。しかしその音とは裏腹に、一階には病に伏せる小さな少女が横たわっています。少女は母の留守中、弱々しい声で主人公を呼び、自らが愛してやまない音楽時計のネジを巻いて欲しいと頼みます。その眼には、病による疲労とともに音楽に癒やされる安らぎが映っていました。少女の周りに漂う張りつめた空気は、家全体をも陰鬱なものに変えています。

音楽時計と人生の儚さ

少女の病状は進み、日に日に痩せ、身体はますます弱りながらも、変わらず音楽時計の美しい音を楽しみにしています。会話の中で、少女は死への意識をほのめかし、「死んだら音楽時計を自分と一緒に入れてほしい」と語ります。その言葉には、少女の死に対する静かな覚悟と、音楽時計に込められた大切な想いが感じられます。悲しさと不条理を目の当たりにし、主人公は胸を締め付けられる思いでそれを見つめるばかりです。

最期の願いと母との別れ

母親に対しても、少女は自らの死を冷静に見つめているようでした。ある日、彼女は母に化粧をしてほしいと頼みます。それは、少女が最後まで“美しい”自分でありたいと願う心の表れでした。その後、少女の最期が近づく中、母親もまたその現実を悟りながら涙します。最期の時、音楽時計のメロディに耳を澄まし、穏やかな表情を浮かべる少女。彼女の願いを叶えるように、その音は静かな安らぎをもって家中に響きわたります。

まとめ

室生犀星の『音楽時計』は、ひとりの少女の静かな死を描きながら、生と死のはざまで揺れる人間の感情を繊細に表現した短編です。『音楽時計』というモチーフは、命の儚さとともに、希望やぬくもりを象徴し、読者の心に静かに響きます。少女の純粋な願いや、美しくあろうとする心、そして母との深い絆は、誰にでも訪れる別れの瞬間をやさしく照らしてくれます。静けさの中に込められた深い愛情と哀しみを味わえる、珠玉の一編です。

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