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岡本かの子の『鯉魚』あらすじ紹介。とある男女の運命の出会いがもたらす禅の悟り

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ゆうゆうtime編集部

小説『鯉魚』(りぎょ)は岡本かの子が描く、美しさと仏教の哲学に満ちた作品です。嵐山の風光明媚な舞台で生まれる一つの出会い、人間の内なる葛藤、そして悟りへの旅路が交錯します。その胸打つ展開を一緒に追ってみませんか?

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青年と女性の出会い

嵐山の大堰川近くに佇む臨川寺。そこでは青年が、毎日鯉に生飯(さば)を施しています。幼少期からこの役目を担ってきた彼は、この鯉ともすっかり親しい存在になっていました。ある日、雨に濡れた川辺で彼が偶然見つけたのは、疲れ果て倒れていた美しい少女・早百合姫です。少女は細川教春という武将の娘で、戦乱によってすべてを失い、父を探しに孤独な旅をしている途中でした。青年は彼女を助ける決意を抱きますが、寺で匿うことはできないため、川辺の苫船(とまぶね)に彼女を隠すことにしました。

秘密の接触と芽生える恋心

青年は彼女にひそかに食料を届ける日々を送ります。その秘密めいた逢瀬は、やがて二人に特別な感情が生まれ、深い気持ちへと発展していきます。青年と早百合姫は、戦乱の世の中で希望を失いかけた心を互いに支え合うようになります。しかし、その絆が強くなるほどに、青年は僧としての道徳と男としての感情の葛藤に苦しむのでした。

その愛がもたらした禅の悟り

ある日、二人は苫船から川に入り、一緒に遊ぶという危険な行動に出ます。これが寺の僧たちに知れ渡ってしまいます。大衆の前で青年は厳しい問い詰めを受けますが、彼の答えは一貫して「鯉魚」という禅の一言。最初は自分を守るためだけの言葉だったその答えが、やがて青年に真理の一端を悟らせ、深い安心と困難の克服を導きます。そして、住職の裁定のもと、事件は収束。青年は僧として新たな一歩を踏み出す道を選びます。

それぞれの新たな人生

その後、青年は鯉魚庵を開き、悟りの境地で修行に邁進します。一方で早百合姫は京の町で舞いの道に進み、名高い白拍子(しらびょうし、遊女・踊り子のこと)としてその才を開花させます。生きる道が分かたれた二人ですが、お互いに深い影響を与え続け、精神的な絆を持ち続けました。そして、物語はまた穏やかな川のほとりに戻り、住職が再び鯉魚に生飯を施す日々を描きながら幕を下ろします。

まとめ

『鯉魚』は青年と少女の運命的な出会いと内面的な葛藤、そして禅の悟りを鮮やかに描いた作品です。青年の変化や早百合姫の生き方から、人間の心の強さや成長の意味を考えさせられます。そして、それぞれの結末が象徴するように、この物語は愛だけでなく、人生の多様な側面を哲学的に見つめています。運命に揺れ動く彼らの物語を通じて、私たちもまた、人生の中にある深いテーマに触れることができます。岡本かの子の美しい描写と深い洞察に、ぜひ触れてみてください。

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※本記事の一部には自動生成による文章を含みますが、内容は編集者が確認・監修のうえで掲載しています。正確性には十分配慮していますが、最終的なご判断は公式情報等をご確認ください。

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