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【60代からの住まいのお金】そのまま住む?リフォームする?住み替える?メリット・デメリットを徹底解説!

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更新日

ゆうゆう編集部

子育てが終わり、家族構成やライフスタイルが変化した今こそ、住まいを見直す絶好の機会。リフォームや住み替えをするなら、住まいに使える予算のメドは? どこにいくらかかる? お金のプロに“ホントのところ”を聞きました。

お話を伺ったのは
ファイナンシャルプランナー
社会保険労務士
井戸美枝さん

いど・みえ●井戸美枝事務所代表。ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士、産業カウンセラーとして相談、講演、執筆活動などを行う。
経済エッセイストとしても活躍中。
9月26日に新著『ひとりで自分資産はつくれる 52歳からお金を貯める・増やす』(主婦の友社)を発売予定。他、著書多数。

今の年齢から逆算して資金計画を立てよう

年数を重ねて設備が古くなり、不便を感じるようになった自宅。何も手を加えずにそのまま住み続けるか、安全や快適さを求めてリフォームするか、自分サイズに合った家に住み替えるか、悩んでしまう人も多いはず。

そもそも住まいの見直しはいつ頃、どんなタイミングで行うのが適切なのか。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは「早いほうがいい」と話す。

「最もお金が大きく動くのは住まいです。定年退職後は主な収入が年金になるわけですから、住まいで失敗すると取り返しのつかない事態を招く場合も。子どもが独立したときなど、60歳前後から今後の住まいについて考え始め、それぞれのメリット・デメリットなどをしっかり検討するのがいいでしょう」

井戸さんが指摘するように、リフォームするにしても住み替えるにしてもお金が必要。限りある老後資金を賢く使うためにはどうすればいいのか。

「先々のことはわからないと思われるかもしれませんが、その家に何歳まで住むのかを一応決めて、逆算していく必要があります。しばらくは夫婦2人で暮らすとして、どちらかが一人暮らしになって、介護を受けながらそこに住むのかなど、2段階に分けて考えたほうがいいと思います。ヒノキ風呂などの豪華なリフォームに憧れるかもしれませんが、そのお風呂にあと何回入れるのかも考えて。お金をあまり大きく動かさないためにも、逆算していくことが大切です」

実際に自分が住まいにかけられるお金はどれくらいなのか、いくら残しておけば安心なのか。逆算方法を井戸さんが教えてくれた。

「女性は93歳、男性は88歳が一番死亡率が高いといわれているので、そこから逆算してお金の段取りをしていくのがいいと思います。まずは収入と支出の差額がいくらか、今の段階で計算してみましょう。収入には年金も含みます。そして、あと20年なのか30年なのか、余命を考えて計算していきます。たとえば月に3万円の赤字であと30年生きるとしたら、月3万円×12カ月(1年分)×30年=1080万円、これが老後に必要な貯えです。家電の買い替え費用や医療費、介護費用などが必要になると考えられるので、その分も確保しておきます。75歳から90歳までにかかる平均医療費は338万円(2割負担の場合)、平均介護費用は580万円というデータがあります。医療費+介護費用を約1000万円と見て取りおけば、不安も和らぐのではないでしょうか。総資産からこれらの費用を引いて残った金額が、住まいに使えるお金ということになります」

年金額や支出額は人それぞれ。不安を募らせたり焦ったりする必要はない、と井戸さん。

「活動的に動けるうちに計算して自分に合った住まいを選び、あとは楽しくお金を使ったほうがいいと私は思っています」

そのまま・リフォーム・住み替えを比較しよう

そのまま住み続ける

メリット

・住み慣れた土地で、近所に顔見知りも多いため安心感がある
・リフォーム費用や引っ越し費用、それに関連する手続きなどの負担がかからない
・病院やスーパーなど、これまでと同じ慣れた場所に引き続き通える

デメリット

・古い設備を使い続けると、年を重ねるにつれて掃除などの家事が大変になる
・階段や段差での転倒、ヒートショックなど、自宅内での事故の危険性が高まる
・車必須の地域では、免許証を返納した後の移動が困難になる場合もある

リフォームする

メリット

・住む場所は変わらないため、ご近所づき合いなども今までと同様にできる
・新しい設備に交換することで水道・光熱費が節約でき、家事もしやすくなる
・バリアフリーのリフォームを行えば、住宅内での事故を未然に防げる

デメリット

・近年の物価高でリフォームの金額が値上がりし、高額になることも
・1回のリフォームですめばいいが、その後、何回か必要になる場合もある
・マンションの場合は窓やドアなど、リフォームしたくてもできない部分がある

住み替える

メリット

・今の自分に合う場所に住まいを移せる
・コンパクトな住居を選べば、家事動線が短くなりラクに。水道・光熱費も安くなる
・交通の便がよい場所なら、老後も買い物や通院などがしやすい

デメリット

・費用がかかる。引っ越しの際に捨てるものが多ければ廃棄処分の費用も多額に
・住み替え先で新たに人間関係を築かなければならないため、精神的に疲れる
・元の自宅を売却する手続きに加え、引っ越しには気力と体力が必要

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撮影/大坪尚人(井戸さん) 取材・文/本木頼子

※この記事は「ゆうゆう」2025年9月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

監修者
井戸美枝

ファイナンシャル・プランナー

いど・みえ●井戸美枝事務所代表。ファイナンシャル・プランナー、社会保険労務士として相談業務、講演、執筆活動を行う。『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください! 増補改訂版』(日経BP)など著書多数。

いど・みえ●井戸美枝事務所代表。ファイナンシャル・プランナー、社会保険労務士として相談業務、講演、執筆活動を行う。『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください! 増補改訂版』(日経BP)など著書多数。

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