【豊臣兄弟!】ついに藤吉郎(池松壮亮)が城持ち大名に! 大胆な演出やクセ強キャラ・藤堂高虎(佳久創)からも目が離せない
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志賀佳織
2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」。今まであまりスポットライトの当たることのなかった豊臣秀長を主人公に、戦国時代がどう描かれるのか? ここでは、ストーリー展開が楽しみな本ドラマのレビューを隔週でお届けします。今回は、第17回「小谷(おだに)落城」と第18回「羽柴兄弟!」です。
第17回「小谷落城」
今回の大河ドラマもいよいよ前半のクライマックスに差し掛かってきた。第17回のタイトルはそのまま「小谷落城」。義兄である織田信長(小栗旬)を裏切って反旗を翻した浅井長政(ながまさ/中島歩)の居城・小谷城が落ちる、そのエピソードだ。
いつもと異なり、テーマ曲もなく、キャスト名などのクレジットが映像に重なって静かに流れるだけのオープニングに、やや緊張感が走る。そして、よくこれだけの内容がこの1回に詰め込めた!と思うほど、疾走感のある怒涛の展開である。歴史の授業で学んだように、ことの顛末は知っている私たち視聴者ではあるが、今回の作品ではそれがどう描かれるのか、そこが気になるところだ。
自分のもとを離れていった明智光秀(みつひで/要潤)にまだ恋々としていた足利義昭(よしあき/尾上右近)だったが、今度は甲斐(山梨県)の大名・武田信玄(高嶋政伸)のもとを、従者に身をやつして訪れ、織田信長討伐をもちかける。「わしは織田信長のことが好かぬ! 武田信玄、織田信長を討ち平らげよ。わしはまことの将軍になりたいのじゃ」
信玄は織田との盟約を破ることはできないと一旦は断るが、度重なる説得を受け、ついに義昭とともに出陣することを決意する。
元亀3(1572)年10月、信玄は総勢2万5000の軍勢を率いて遠江(とおとうみ/静岡県西部)への侵攻を開始、12月には、三方ヶ原(みかたがはら)の戦いで、織田と同盟を結ぶ徳川家康(松下洸平)と対戦し、相手方を破った。義昭はこの勢いに乗って京都・二条御所で挙兵し、信長勢は劣勢に追い込まれるに至った。
しかしそんな武田軍に、思いもかけぬ出来事が襲いかかる。信玄が急死してしまうのだ。武田勢はしばらく信玄の死を伏せたまま、甲斐に引き上げていく。元亀4(1573)年春、その知らせが入ると、信長は7万の軍勢を率いて京へ向かい、二条御所を制圧した。そして、義昭が逃げ込んだ山城(京都府南部)の槇島(まきしま)城に入った。その信長のもとに引き出された義昭は、高い位置から自らを見下ろしている信長を見据えて、高ぶる気持ちを抑えるように声をかける。「久しいのう、信長」
しかし、信長は表情を変えぬまま、ただこう告げるのみだった。「お命を取るつもりはありませぬ。手前が将軍になるつもりもありませぬ。京を離れていただきます」
「光秀はどうしておる?」と尋ねる義昭だったが、それにも信長は一言、「十兵衛(=光秀)は、もう我がものにございますゆえ」と言い放つのだった。
そして、場面が二条御所に変わると、信長の命を受けて、ほかの家臣たちとともに二条御所を打ち壊す光秀の姿があった。庭には義昭が刀の稽古をしていた藤戸石があった。光秀は万感の思いをもって、その石に刀を振り下ろすのだった。
義昭は京を追放され、それを藤吉郎(池松壮亮)と小一郎(仲野太賀)は見送る。義昭は二人に出会ったときのことを思い返し、「おぬしらに始まり、おぬしらに終わるか」と呟く。そして以前、小一郎に言われた「豊作の世にしてくだされ。無様でも生き延びてくだされ」という言葉を、改めてかみしめていた。ここに十五代続いた室町幕府は終焉を迎えた。
そして天正(てんしょう)と改元された8月、信長は虎御前山(とらごぜんやま)に陣を構え、朝倉・浅井攻めにとりかかった。朝倉義景(よしかげ/鶴見辰吾)は、浅井が動くまで自分たちは動かないと宣言するが、そこへ大嶽(おおづく)砦が信長の手に落ちたという知らせが入る。朝倉勢は一乗谷へ引き揚げようとするが、それを見越したかのように織田軍が背後から攻めてきた。しんがりを任された斎藤龍興(たつおき/濱田龍臣)は必至に抵抗するも、織田の勢いに押されてしまう。
進退窮まった義景は賢松寺に逃げ込んでいたが、愛する一乗谷が信長の手に落ちるぐらいならば、その前に自分の手で滅ぼそうと、朝倉景鏡(かげあきら/池内万作)に火を放つことを命じる。そこには家臣の家族やたくさんの民がまだいるといって反論する景鏡に、義景は、このまま織田の慰みものになるぐらいなら、自分が滅ぼすと言って聞かない。そんな義景の首を景鏡は背後から斬り落としてしまうのだった。
朝倉の援軍を失った浅井勢は、小谷城に籠城して抵抗を続けたが、織田勢の勢いの前にはもはやなす術もなかった。浅井久政(ひさまさ/榎木孝明)も自害。残るは長政がいる本丸のみとなった。
信長の前に、藤吉郎が進み出る。「殿、畏れながらこのサル、一生のお願いがございます!」すると小一郎も黙ってはおられず、やはり進み出る。「奇遇じゃのう兄者。この弟サルめも同じにござりまする」。すると柴田勝家(かついえ/山口馬木也)も現れて、「この権六もたっての願いがござりまする!」と申し出た。皆、思うことはひとつ、信長の妹・市(いち/宮﨑あおい)と娘たちのことだった。
3人は浅井に出向き、軍勢との交渉は勝家に任せた藤吉郎と小一郎は、長政と市のもとに向かう。藤吉郎と小一郎は、信長が、長政が市を守るために朝倉と手を組み、信長を裏切らざるを得なかったことをわかっている。ついては、幼い3人の娘も連れて一家で織田に戻ってこいと仰せだと伝える。しかし、長政は首を縦には振らない。そして、市にこう言うのだった。「織田信長と戦い、あと一歩というところまで追いつめたこと、わしは誇りにしている。だからわしは、そなたとは生きてはいけぬ。ここで終わらせてくれ」
「私もお供いたします!」という市に、長政はこう返す。「ならぬ。そなたにはまだやらねばならぬことがあろう」
小一郎は、生きたくても生きられない者もいるのに、なぜ命を自ら落とさねばならないのか、「侍の誇りがなんじゃ! 生きてくだされ」と長政に切願すると、「わしとおぬし、どちらが正しいか答えを出そう。勝負をしよう」と言って、長政は二人と相撲を取ってみせる。
しかし、兄弟は長政に負けてしまう。相撲を取る間、長政の脳裏には、かつて信長と相撲を取って笑いあったときのことがよみがえっていた。「ありがとう。わしのためにここまでしてくれて。最後に会えたのが、二人でよかった。市と二人にしてくれ」
市と二人きりで向き合った長政は、手作りのお守りを市に渡す。「これを茶々たちに。お守りだ。そなたのようなよき姫に育ててやってくれ。市、いつまでもそなたらしく強く生きてくれ。わしはそんなそなたが大好きであった」
一人になった長政は、庭で脇差を腹に突き刺す。一方、市は部屋に兄弟たちと残された。そのとき、小一郎が突然、以前、途中になってしまった物語の続きを市に語って聞かせ始める。溺れた姫を救いたいために、湖の水をすべて飲んでしまった大男の話である。救った姫を抱きしめたい大男だったが、飲んだ水で膨れた腹が邪魔になって抱きしめられない。大男は結局、自分の腹に針を刺して水を抜いたところ、その水が天に上って、大男は月になったという筋である。物語を聞く市の目からは、涙がとめどなくあふれてきた。「私はいつも思っていたのです。兄上が太陽なら、殿は月じゃと」。そして、兄弟のもとに歩み出ると、決然としてこう言うのだった。「刀を。頼む」
切腹した長政は、死にきれずに苦しんでいた。そこへ、刀を持った市が現れる。「すぐに楽にして差し上げまする。私は変わりませぬ。いつまでもあなた様をお慕いしておりまする」。介錯した市の顔に長政の返り血が飛び散る。実に壮絶な幕切れだった。
これまでにないような大胆な脚色だが、この夫婦ならそういうこともあり得たかもしれないと思わせるところが、この作品、市のキャラクターにはある。小一郎たち兄弟の絡み方にもいろんな意見があるだろうが、心が温かくなるエピソードが繰り広げられていて、史実がどうであったかも、気にならなくなるような力があるところがいい。
