朝ドラ【風、薫る】「寂しくて、嬉しいです」に見えたりんの成長、直美の“嘘”も気になる
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田幸和歌子
1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。近代看護界の先駆者となった2人の女性を主役とする物語。「風、薫る」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください
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>>朝ドラ【風、薫る】りん(見上愛)と直美(上坂樹里)、タイプ違いでも“ベタベタしない信頼”が育つ瞬間「寂しくて、嬉しいです」と返事する
週5本の放送で半年間を紡ぐ朝ドラの世界では、その週(または週またぎ)ごとにさまざまなクエストをクリアしながらメインストーリーを紡いでいくことは珍しくない。主人公が働くうえで新たな難題が降りかかったり、トラブルメーカー的な新しいキャラクターにとまどったりしながらも、それらを解決していくことで一歩ずつ成長していくような流れだ。
『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる・中央公論新社)を原案とし、見上愛・上坂樹里の二人が明治時代を駆け抜けたトレインドナースをダブル主人公として描くNHK連続テレビ小説『風、薫る』の第9週「看病婦とアメ」は、前週の大きな〝クエスト〟であった和泉侯爵夫人の千佳子(仲間由紀恵)の心をりん(見上愛)がほどき、乳がんの手術を決意するところから幕を開けた。
地位もプライドも高い千佳子であるからこそ抱える孤独や不安。それを涙を流しながら告白するところに、りんとの距離がここまで近くになっているのかと実感する。
「私は手術室でもずっとおそばにいます」
と告げ、一人ではありませんと千佳子を勇気づける。寄り添い孤独を解消する。そんなりんの凛々しさは、すでに立派な看護師としての顔つきのようである。
手術は無事成功し、千佳子はやがて退院する。千佳子はりんに、また会いたいけれど会わないほうがいいわよねと冗談混じりに礼を言う。そんなりんは、
「寂しくて、嬉しいです」
と返事する。
これこそ、看護婦見習い早々に「下女」呼ばわりをするなどりんの前に立ちはだかった「クエスト」のような存在だった厄介な入院患者・園部(野添義弘)とのやりとりで学んだ、患者が回復し退院していくことが一番だということそのものである。バーンズ(エマ・ハワード)から言われた「看護は仕事であり奉仕ではない」という教えももちろんそこにある。りんが千佳子に笑顔で答えたこの返事こそ、看護を学びその真髄にりんが近づいたことを実感できるやりとりであった。
さて、手術は無事終わったものの、りんは自身でも言う通り千佳子の手術では実際にそれを見ていただけである。今週クローズアップされるのが、千佳子の手術の際に医師の介助役を着々とこなしていたベテラン看病婦のフユ(猫背椿)の存在である。
りんは、フユの働きぶりを見て、寄り添ったり清潔を保つだけでない、技術による看護、手術介助についていろいろ教えてもらおうと願うが、「お金をくれたらね」と、見返りに金銭を要求される。
「看病婦と見習い生の間に吹く風は、荒れ模様」
と、研ナオコの語りで言われていた通り、千佳子が退院したあとの新たな「クエスト」が、フユの存在と解釈して差し支えないだろう。
