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朝ドラ【風、薫る】「寂しくて、嬉しいです」に見えたりんの成長、直美の“嘘”も気になる

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田幸和歌子

「なんかじゃありません!」と二人は言い返す

フユは、子供は奉公に出し、夫の康介(じろう)はけがのために働けない状態で伏せっていることを告げ、本当なら看病婦として他の患者をみるのではなく、夫の看病をしたい。それでも生きるために働かなければならない、将来のためにやっている見習い生たちとは立場が違うことを強めにぶつける。

りんと直美(上坂樹里)は、時間の合間に康介のもとを訪れ、康介を看護する。
「なんかじゃありません!」
看病婦の仕事を「なんか」と言う康介に二人は言い返す。フユと康介夫婦の心に歩み寄ることで、りんと直美は解決へと向かう。

たとえば、現状で歩行も困難なことからトイレも我慢し水分をとらないようにしているなどが分かる。これは観察するという、りんたちが学んだ看護の初歩そのままの発見である。康介は康介なりのフユへの気づかい、申し訳なさを抱えていることをりんと直美に告げる。そして、りんと直美は、飴を康介へのお見舞いとして持参する。甘くて日持ちする飴はきわめて適切だ。この飴の甘い味が看病婦たちにも配られたことでフユ夫妻、看病婦たちとりんたちの間の何かを少しずつ溶かしていく。

「君の仕事は『なんか』なんかじゃないって」
こう康介はフユに言って笑った。本当の意味での「看護」によって、少しずつ目の前の相手の態度や心情が変わっていく。クエストクリアを感じる瞬間だ。

朝ドラ【風、薫る】「寂しくて、嬉しいです」に見えたりんの成長、直美の“嘘”も気になる(画像5)

「風、薫る」第45回より(C)NHK

「飴よろこんでた、主人が。ありがとう」
少し照れくさそうにそっけなく感謝をつたえるフユ、いい場面である。そして、フユに教わりながら少しずつ手術介助を学んでいく。

「この仕事はね、家事だと思ってやらないと間違えるよ」
このフユの言葉の真意はどこにあるのか。この先、「間違える」ことも予想されそうな気になる一言ではある。

そんな見習い生と看病婦という対比の構図は、りんとフユの個の話ではなく少しずつ違いが近づいていくところを、小さな描写を重ねていくことで描かれていく。

たとえば、看病婦のヨシ(明星真由美)がガーゼを鮮やかに切ることに、「すごい! ヨシさん呉服屋で働けますわ」と、見習い生のひとり、しのぶ(木越明)が感心する。それについて「馬鹿にしてんの」と言うヨシに、しのぶは自分は呉服屋の娘だと説明する。

「金持ちの子か」
そういうヨシの言葉に、
「はい、むしろ金持ちの子が同じ仕事をしていることを認めてほしいですわ」
ときっぱり返すしのぶ。思わず笑ってしまう切り返しだが、これもまた、相当な距離の縮まりを感じさせてくれるやりとりである。

それらを少し離れたところから見つめていたバーンズは、
「変わっていましたね」
と少し感慨深そうに見習い生たちの成長を実感したように伝えた。さまざまなクエスト、経験を重ねながら、一歩ずつ自立したトレインドナースへの道を歩いているりんたちである。

朝ドラ【風、薫る】「寂しくて、嬉しいです」に見えたりんの成長、直美の“嘘”も気になる(画像6)

「風、薫る」第45回より(C)NHK

ところで直美はどうなのか。手術介助に参加しないことを「不器用だから」という明らかな嘘をついて別のアプローチで看護の道を切り開いていく一方で、生みの母の存在に近づいていくというクエストをこなしているところだ。寛太(藤原季節)を通じて手がかりに迫る。

直美がそこまで強くこだわりを見せる理由を、看護を学んできたことで考えが変わってきたと言う。自分を産んだ母の顔を見て、自分と向き合いたいのだと。これが直美が個人的に解決しなければならない大きなクエストである。この先大きな山場が来ることは明らかであり、そこで直美がどう向き合い、成長またはもしかしたら挫折や絶望につながっていくのか。気になる部分である。

見習い生たちの奮闘はつづく。

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