朝ドラ【風、薫る】りん(見上愛)と直美(上坂樹里)、タイプ違いでも“ベタベタしない信頼”が育つ瞬間
公開日
更新日
田幸和歌子
1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。近代看護界の先駆者となった2人の女性を主役とする物語。「風、薫る」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください
▼前回はコチラ▼
>>朝ドラ【風、薫る】仲間由紀恵演じる侯爵夫人が波乱を呼ぶ? りんと直美の成長を見守りたい弱い存在が力を合わせて強大な理不尽に立ち向かう
『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる・中央公論新社)を原案とし、激動の明治時代を駆け抜けた二人のナースを、見上愛・上坂樹里のダブル主人公として描くNHK連続テレビ小説『風、薫る』の第8週「夕映え」が放送された。
帝都医科大学附属病院で看護婦見習いとして働きはじめた、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)の奮闘は続く。
今週軸となりストーリーを動かしていくのは、乳がんのため入院してきた和泉侯爵夫人の千佳子(仲間由紀恵)の存在だ。身分はもちろん、プライドも高い彼女は、附属病院の入院自体に不平不満をのべる。そんな千佳子の担当をするのがりんだが、千佳子はりんを女中呼ばわりし、女中なら事足りていると突き放す。りんは私たちは女中ではなく、西洋ではトレインドナースとよばれるれっきとした職業であることを説明する。
「女中でないなら一体何をしてくださるの?」
看護の本質に添うように千佳子の気持ちに寄り添おうとするものの、それを「思い上がらないで」と言われてしまう始末。自分なりにがんばるが、なかなかその気持ちは通じない。これはどこか嫁ぎ先の姑や勤め先の頭の固い上司などに理不尽な目にあいながらも真っ直ぐがんばるという、ある意味従来の朝ドラ主人公の定番のような扱いともいえる(もっともりんは序盤に結婚し、すでに嫁ぎ先で理不尽な目にあっているわけではあるが)。
このモンスター患者のような描かれ方の千佳子は、りん個人に強く当たるわけではなく、病院全体からも腫れもののような扱いとなっている。何かあったときに病院のせいにされるのではなく、りんたち梅岡看護婦養成所に責任をかぶせればいいという考えだ。
しかし、そんな目論みはりんたちの指導をするバーンズ(エマ・ハワード)にはすべてお見通しだった。
「りんに看護させ、何かあれば養成所のせいにする気です」
医師たちに分からない英語で、医師たちの目の前でハッキリ言い切る。バーンズの自信に裏打ちされた強気ぶりが心地良い。そこに直美が、やはり英語で「上手くいけば実習生の手柄」と返す。
こういった立場の弱い存在が力を合わせて強大な理不尽に立ち向かう展開は、ジャンルを問わずワクワクするものである。見習いたちをはじめから下に見る医師たちや、千佳子をはじめとするわがままな患者たち。それらへの対処がりんたち見習い看護婦たちの結束、チーム感の形成につながっていく。中庭でそれぞれの弁当を一緒に食べるシーンも、お互いの信頼と友情を育んでいく青春の貴重な時間を感じさせてくれる一コマだ。
厳しく立ちはだかる存在かと思われたバーンズは、逆に彼女たちの自立を理解しながら支えるような頼もしい存在となった。そんななかでもりんと直美の関係性は、絶妙にすれ違いを見せてきた序盤があったからこそタイプ違いの二人のベタベタしない信頼関係がいつの間にか形成されていることが分かるような気がする。
