「団地のふたり」最終回。今はまだ、物語が終わった気が全くしない。この団地の“引力”は半端じゃない
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柚野木
いつの間にか、自分がこの団地に住む一員であるかのような
そして、大晦日の晩にはとっておきのサプライズで「ふたり紅白歌合戦」が用意されていた。ここでは80年代にタイムトリップしたかのように、ふたりが当時のヒットソングを熱唱していく。アカペラでコミカルに歌う様子は当時のコント番組を見ているようでもあり、懐かしさがこみ上げる。曲のチョイスも絶妙で、たとえば「ウエディング・ベル」(Sugar)では最後のフレーズも挟み込んで、サービス精神満点だ。そして最後は、きっちり「蛍の光」で締めくくる。
このドラマは最後の最後まで日常の風景を描くことに徹していた。悪人は出てこないし、警察沙汰の事件も起きなければ、三角関係や嫉妬で人間関係がこじれることもない。それにもかかわらず、驚くほど引き込む力を持っている。その理由を考えるに、まずふたりのお気楽な会話のなかに笑いのエッセンスがたっぷり含まれていたこと。そして他の登場人物も愛らしく、どこかとぼけた要素を持っていて、こちらの気持ちをほぐしてくれることにあったと思う。
また、誰かの悪口が出てこないのが物足りないかというと、そうでもない。このふたりは言葉にはしなくても、ときに心の中でボヤいたりして、多面性を持った人物であることが分かるので、言動一つひとつに共感できた。
そしてドラマで扱われるテーマが親の老い、自分の体のこと、家の老朽化の問題など、どれも視聴者にとってリアルなことなのだが、そこにユーモアセンスを感じる展開が用意されていたことで、ずいぶん救われた。
さらに言わずもがな、俳優たちの魅力、確かな演技、すばらしい演出の力によるところも大きい。これら魅力的な要素があいまって、いつの間にか、自分までもがこの団地に住む一員であるかのような感覚ではまり込んでいったのだと思う。
今はまだ、物語がここで終わった気がまったくしない。当分は頭の中に、団地の個性的な面々が住み続けるだろう。それならば、ひとつ居心地のよさそうな喫茶店を探してみようか。そして親しい誰かとの会話を楽しみ、甘いものをほおばって、幸せなひとときをかみしめるのだ。
ふたりのような暮らしをときに思い描きながら、日常の生活の中にある“ご機嫌”な時間を大切にして、ゆったりのんびりやっていこう。
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