NHKドラマ【大奥3話】家光(堀田真由)圧巻の芝居。福士蒼汰とのあまりに短く悲しい束の間の幸せ
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田幸和歌子
実は家光(千恵)は亡き父(家光)が生前乱暴した女性との間に生まれた子だったこと。母は気鬱になったが、千恵を持ったことで生きる力を取り戻し、貧しいながらも幸せに暮らしていたところ、春日局が現れ、母を殺して千恵を連れ去ったこと。そして、亡き父の身代わりをさせられ、髪を切られ、女の格好ができなくなり、大奥から逃げようとしたときに何も知らない男につかまり、乱暴され、その男を殺したこと――それが最初の男が手打ちにされた真相だったのだ。
そこからの家光を演じる堀田真由の芝居は圧巻だった。
生まれたときからずっと踏みにじられ、深い悲しみをたたえていた目に、諦めと残酷な色が加わる。大奥の男たちに女装させて躍らせ、腹を抱え、涙を流しながら笑い転げる姿は、まるで自身をさらに傷つけようとしているように見えた。
しかし、そこに女装をした有功が現れ、打掛を脱いで家光にかけて、言う。
「ほら、上様のほうがよほどお似合いにございます。千恵さま」
それはおそらく物心ついてから初めて「女」として扱われた瞬間で、初めて呼ばれた自分自身の名前だったろう。まるで心が壊れないよう覆っていた冷たく硬い鎧が壊れ、心がむき出しになったように、小さな子のように泣き崩れ、有功にしがみつく家光。そこから有功の前では見せる顔も、声色も柔らかく穏やかに変化していく。それはあまりに短く悲しい束の間の幸せだった。
田幸和歌子のNHK「大奥」レビュー
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