田幸和歌子の「今日も朝ドラ!」
【舞いあがれ!】第16週 舞ちゃんは慎重で控えめながら、なんともしぶとい、最強のヒロインか
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田幸和歌子
舞ちゃんはどうなる⁉︎ わくわくしながら朝ドラを見るのが1日の始まりの習慣になっている人、多いですよね。数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。より深く、朝ドラの世界へ!
【お詫びと訂正 第16週の記事を再配信いたします】
2023年1月23日の「田幸和歌子の今日も朝ドラ!」舞いあがれ!第16週の配信において、誤った記事を掲載したことが判明しました。お詫びして、正しい記事を配信させていただきます。
福原遥がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の第16週「母と私の挑戦」が放送された。
浩太(高橋克典)が亡くなり、航空会社の内定を辞退した舞(福原)はめぐみ(永作博美)と共にIWAKURAの再建に励む。在庫処理と経費削減、リストラで信用金庫の信用を得ためぐみは、融資の返済期限を半年延長してもらい、舞が営業に注力することに。
しかし、自社製品の特徴も知らない舞の営業は難航し、ネジについての講習を笠巻(古舘寛治)にしてもらい、めぐみも、さらにネジが好きな若手・土屋(二宮星)も加わって講習会は活気づいていく。
もともと何でもできる子だっためぐみは、夫を失ったことで自分が後を継ぐ覚悟を決めてから、もともとの勉強熱心さと吸収力・判断力の高さから、経営者として急成長していく。売上データの中から、売れば売るほど赤字になる受注に気づき、それがリーマンショックで仕事が減った際に売り上げを得るべく安く請け負った仕事と知る。そして、値上げ交渉にのぞみ、「主婦感覚」と見くびる相手に対し、職人たちの高い技術への正当な対価だと主張するのだ。
一方、舞は熱心に営業を続けた結果、新しいネジの試作の仕事をもらう。しかし、設計できるのは他社に引き抜かれた章(葵揚)だったため、暗礁に乗り上げたかに見えた中、舞はこっそり章に助けて欲しいと連絡する。
そこで章が助けてくれるが、ここで舞が視聴者にそっぽをむかれないのは、社外の人間に図面を見せることにめぐみが躊躇し、無償はダメだと従業員が言うなど、周りの大人たちがちゃんと舞の甘さを指摘しているためだ。
そうした視聴者目線の代弁者の一人が、事務員・山田(大浦千佳)でもあった。現役で入った公立大を中退し、航空学校に行き、パイロットになることが決まっている「社長の娘」が、会社の危機に「手伝い」に来て、「ひとりだけ救命胴衣着てはんのに」「沈みそうな船乗ってる仲間って顔」をしていることに苛立ちを見せていた。
しかし、嫌みを言ってもこたえる様子もなく、素直に人の話を聞き、内定先を辞退してIWAKURAの再建に挑み、ネジの構造まで真剣に勉強する舞の姿に、驚き、呆れ、関心を抱き、何度も「私なら~」を繰り返していた山田。おそらく当初は舞を「持てる人ゆえのゆとりのある人」と思っていたのだろう。
本当は要領が悪く、素直で、しぶとく、諦めが悪い人ということが見えてくるにつれ、それが山田自身を奮い立たせる力にもなっていったはずだ。舞が新規の仕事をとってきた理由は、「社長の娘」だからでもなければ、学歴でも、若さや容姿でも、経験でも人脈でもなく、どこまでも諦めないこと。刈谷先輩の言葉を借りるなら「しつこかけんね」の一言に尽きるから。そして、それこそがおそらく合コンに勤しみ、逃げることばかり考えてきた山田の諦めてきたもの、捨ててきたものだったのだろう。