【大奥4話】イケズ返しの福士蒼汰と、悲しくも温かい母 斉藤由貴。脚本森下節が冴えわたる
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田幸和歌子
江戸時代の男女逆転の世界が描かれる、NHKドラマ10「大奥」。奇想天外なエンターテインメントに、毎週ひきこまれていく人も多いことでしょう。数多くのドラマレビューを執筆するライター田幸和歌子さんに、NHK版「大奥」について語っていただきます。
(ネタバレにご注意ください)
よしながふみ原作漫画×森下佳子脚本により、男女逆転劇の世界を描くNHKドラマ『大奥』の第4話が1月31日に放送された。
江戸幕府3代将軍家光が流行り病の「赤面疱瘡」で亡くなり、その身代わりとして春日局(斉藤由貴)に連れて来られ、徳川家の子を産む道具にされてきた千恵(堀田真由)と、無理やり還俗させられ、大奥に仕えさせられている元僧侶・有功(福士蒼汰)の心が通い始めた。
と思ったら、有功は春日から、千恵の夜伽の役目を解かれてしまう。1年間子どもができなかったからで、すでに次のお相手として捨蔵(濱尾ノリタカ)が用意されていた。原作では有功と容姿がそっくりな男が連れて来られるが、ここは福士蒼汰が二役を演じるのではなく、別人を配置。かわりに、選ばれた理由を「種をつけるのがうまいと評判」と改変しており、それにより男が「種」だけ、女が「腹」を貸すだけの存在として扱われる残酷さが際立ってくる。
しかも、夜伽の交代について有功に聞かされた千恵は強く拒否し、有功に「死ね!」と激昂したかと思えば、「有功は死んではならぬ。わしが石女なのじゃ。どんな男とでもはらめまい」と願いにも似た言葉で有功に寄り添う。そして、捨蔵を足蹴にして「そなたがわしを抱くのではない。そなたがわしに抱かれるのだ」と言う。にもかかわらず、捨蔵との子をあっさり懐妊。それは有功にも千恵にも残酷な現実だったが、姫君が生まれると、千恵は捨蔵に、明るく呑気な様子から「お楽」という名を与える。
有功への思いとは別に、子の存在が、千恵を母に、捨蔵を父にし始めたのだった。しかし、そんな捨蔵が足を滑らせて半身不随になると、千恵は春日の許しを得て、再び有功と逢瀬を重ねる。それでも3カ月経っても子はできず、次の夜伽の相手が用意される。
冷静に見えた有功が嫉妬に狂う様が切ない。一方、心を捨てたかに見えた千恵は、大奥を出て町を歩き、男がいかに減少しているか、人々が困窮しているかを知る。このあたりから千恵はもはや少女ではなく、母として、娘の生きる国を守るための為政者の顔になっていく。
どの家業も男がおらず、女が継ぐことが増える中、武家ではそれが許されておらず、娘を息子と偽っている家が増えてきた。そんな中、春日の実の息子・正勝(眞島秀和)も女に家督を継がせることを許しては、と提案するが、春日は拒否。そして、千恵に世継ぎの男の子が生まれるまでとの願掛けで薬断ちしていたことから、病床に伏すことに。
女が家督を継ぐことを頑なに認めない春日の執念はどこから来ているのか。その理由は、病床の春日の世話をする有功に語られる。