岸谷五朗さんが60代を前に思うこととは?「〝還暦〞は生まれ変わりの時。今はその準備期間だと思っています」
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ゆうゆう編集部
50代に作戦を練れば60代はもっと面白くなる
20代は役者としての自分に力をため込んだ時期。30代では今までに蓄積したものを発表する場をたくさん与えられた。ベテランになりつつあった40代は、さらに作品をよくしていくために心血を注ぐ日々。そして50代を迎えてからは……。
「すごく難しい年代だと感じています。寝られなくなったり、膝がとっても痛くなったり(笑)、肉体的な問題がいっぱい出てくる。これまでずっと右肩上がりでやってきたのに、50代で平行線になった感じがしたしね」
肉体や体力の衰えを感じ始めた岸谷さんは大好きだったたばこをやめ、舞台で披露していたバック転、バック宙も封印した。
「でもね、50代になった読者の皆さん、そこで慌てる必要はありません。ここから先は脳を使うんです。焦らずゆっくり自分の問題と向き合って、それをカバーするための作戦会議を頭の中でやればいい。そうすれば60代からもう1回、坂道を上がっていけるはずです。還暦は干支がひと回りして、もう1回生まれ変わる時。その準備期間である50代にじっくり作戦を練っておけば、60代がもっと面白くなる! そんなイメージで今を過ごしています」
ひとつひとつ言葉を選び、ときにユーモアをおり交ぜながら真摯に答えてくれる。強面(こわもて)な風貌とのギャップもまた岸谷さんの大きな魅力だろう。そしてその言葉どおり、60代もその先も、私たちの期待値を軽々と飛び越えて、新しい岸谷さんを見せてくれるに違いない。
「でも俺、目標はもたない主義です。役者にとって一番大事なのは“飢え”。たとえ目標を設定したとしても、ひとつの作品をやり終えたときに自分の飢えがその目標とは全然違うところにあったら、迷わず飢えている方向に行くべきだと思っています。なぜなら、飢えがないと耐えられないから。演じることも、生活も、スケジュールも。全部つらいけれど、『これをやりたい』という飢えがあるからその苦しさに耐えられる。自分の五感に素直に、飢えを信じて進むと苦しくても努力できるし、おのずとその仕事は楽しくなります」
俳優という仕事に対する熱い思いが言葉の端々から伝わってくる。セリフを覚え、役に入り込み、人前に立ち……ピンと気を張る多忙な毎日だが、岸谷さんにはオンとオフの切り替えスイッチがあるのだという。
「半身浴は1年365日、いや、1日2回することもあるから400日くらいかも(笑)。寝て起きたら半身浴をして、汗とともに“素”の岸谷五朗を流し、そのときの役を乗っけていくような感じ。これで仕事スイッチをオンにします。仕事が終わったら一杯飲むのもお決まりの習慣。酒も1年400日くらい飲んでますね(笑)。半身浴でスイッチを入れて、酒でスイッチを切って岸谷五朗に戻る。どちらも大事な時間です」