瞳みのるさんが語る、自炊に目覚めたのはザ・タイガース解散後。「今はコンサート前に勝負飯も自作します」
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藤岡眞澄
ザ・タイガースのメンバーとして大人気を博した瞳みのるさんは、「食べること」をとても大切にしていらっしゃいます。京都時代、ザ・ファニーズ~ザ・タイガース時代の「食」について伺ってきたインタビュー。第3回はザ・タイガース解散後の「食」について、語っていただきます。
離乳食のレシピを毎日記していた
京都に戻って高校に復学し、1年間猛勉強して進学したのは慶應義塾大学文学部中国文学科。大学院に進学するのと並行して、1977年から慶應義塾高等学校で教鞭をとるようになり、本格的に自炊を始めたのもこのころからです。1981年から約2年間は北京大学に留学し、留学生寮で1500Wの電気コンロ1台を駆使して料理を作り、留学生仲間にも振る舞って大いに喜ばれました。
いま、ぼくはブログにほぼ毎日、作った昼食と夕食のメニューと写真、作り方やエピソードなどをアップしています。このきっかけになったのが、北京留学当時に1度目の結婚をし、授かった長男の離乳食なんです。
帰国後、妻が仕事を持っていたこともあり、ぼくはいまで言う“育メン”になりました。バギーを押して買い物に行き、おむつを替え、風呂に入れ、子どもの離乳食と大人の食事を作る。離乳食のレシピは、子どもが2歳くらいになるまで、毎日記録として残しました。7歳離れて生まれた次男のときにもやったので、都合10年くらいは子育て中心の主夫だったわけです。
当時は子どものために、そしていまは自分のためにブログに書いているのが、ぼくの「職歴」ならぬ、「食歴」です。
たとえばきょうの昼食に作ったのは、「春キャベツと桜海老パスタ」。午前中に散歩しながら入った店で「干し桜海老」を見つけたので、メニューを決めました。以前、釜揚げ桜海老で作ったこともありますが、干し桜海老にはかなわない。干したものはしいたけと同じで、旨味が増すし、香りも立つようになる。それに旬の春キャベツを合わせたのですから、出来は最高です。
ぼくの一日は、目が覚めて寝床の中で「きょうは何を食べようか」とメニューを考えることから始まります。朝は抜き。昼食と夕食を、いかに最良のものにするかに心を砕き、外食の予定があるとき以外は毎日欠かさず料理します。
午前中の散歩に出かけた途中で買い物に立ち寄りますが、スーパーや行きつけの商店など少なくとも2軒ははしごして、旬の素材や新鮮なものがあれば、臨機応変。朝考えたメニューをパッと変更します。
料理も音楽も、つねに想像が大事。創作料理には想定外の喜びがあります。料理は日常の小さな冒険。そして、ぼくにとっては音楽と同じように、料理に手を抜くことは一切ありません。