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95歳、現役歌人・馬場あき子さん。「歌があるから、元気でいられる。歌があるから、人とつながることができる」

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ゆうゆう編集部

元気でいられるのは歌があるから

「50歳なんて若い、若い。私の年まで45年、ほぼ倍、あるんですよ」

馬場さんは、50代は上昇気流、60代はさまざまな知識や経験をためていく時期だという。

「70代は充実のとき。ここからが本当にいい時期なんです。長い人生で、いろんな悲劇も喜劇もよいところもそうじゃないところも見てきた。その生きて培ってきたことすべてが実る時期なんです。それを人に分けてあげられるゆとりも出てくる。40代の人と話すなら、その年齢に下りていける。自在なんです。そのうえ、70代は行動力をもっています。どこにでも行ける。楽しい盛り、人生の盛りですよ」

では80代は?と尋ねると、馬場さんはくすっと笑った。

「80代になったら80代がいちばん楽しくて、95の今だって楽しいんだから、結局、70代以降は全部楽しいのよ。私は幸いなことに、80代は体が動いていましたし。今は存在力しかなくなりましたけど、まあ、これでよしとしております」

だが、年齢が上がるにつれ、仲間や友達は欠けていく。

「年々、引き算が進んでいます。仲よくしていた俳人の黒田杏子さんも、作家の大江健三郎さんも亡くなりました。だんだん自分の時代が消えていくんです。知っている人がいなくなるわけですから、寂しさはありますね」

夫の岩田さんが93歳で亡くなったのは、馬場さんが89歳のときだった。

「葬式万端を全部、私がやりきりました。11月に亡くなって、すぐにお正月だったんですが、年賀状も書いて、正月飾りもして、ひとりでお屠蘇を飲み、お雑煮も山盛り食べ、箱根駅伝も見て普通の生活を送りました。そうしようと思ったんです。でも夫が死んでから行動力が少しずつなくなっていきました。不思議ですね。それが年齢ということかもしれないけれど」

ひと呼吸おいて、続ける。

「歌はいいですよ。歌があるから、私はこの年齢でも、何とか元気でいられるんでしょう。今は70代から始められる人が多いんです」

90代で始めて、半年でみるみるうまくなった人もいるという。

「自分の心を見つめ、それを表現する言葉を探り、磨いて、五七五七七という韻律にのせたとき、ぐっと面白くなるんです。そのうえ、歌の会では、歌を前に、年齢も超えて、人とつながることもできる。最初は難しく考えることはないのよ。日本語は何でも五になるから。遠山の、若緑……ほら、全部、五でしょ」

PROFILE
馬場あき子
1928年、東京生まれ。歌人。短歌結社「かりん」主宰。朝日歌壇選者。
日本女子専門学校(現・昭和女子大学)国文科卒業。在学中に歌誌『まひる野』に参加。同時期に能の喜多流に入門。夫は歌人の岩田正氏(故人)。
歌集に、『早笛』『飛種』『桜花伝承』『葡萄唐草』。すべてを網羅した『馬場あき子全歌集』など。評論に『式子内親王』『鬼の研究』など。新作能に『晶子みだれ髪』『額田王』『小野浮船』『利休』。
迢空賞、紫式部文学賞など受賞歴多数。文化功労者、旭日中綬章受章。日本芸術院会員。
朝日歌壇、岩手日報「日報文芸」、新潟日報読者文芸選者も務める。

INFORMATION

映画『幾春かけて老いゆかん歌人馬場あき子の日々』

これまで1万首以上の歌を詠み、80歳過ぎで新作能も書き下ろしている馬場あき子さん。そんな彼女の93歳から94歳にかけての1年間に密着したドキュメンタリー。老いとは何か、成熟とは何かを考えさせてくれる。

©ヒッチハイク/FOR田代裕事務所

出演/馬場あき子  語り/國村 隼 音楽/渡辺俊幸 監督/田代 裕  製作・配給・宣伝/ヒッチハイク

⚫︎5月27日〜K’s cinema(新宿) ⚫︎6月9日〜UPLINK京都 ⚫︎6月10日〜第七藝術劇場(大阪) ⚫︎6月16日〜UPLINK吉祥寺 ⚫︎6月24日〜シネマスコーレ(名古屋) ⚫︎7月15日〜川崎市アートセンター にて公開予定

公式サイト https://www.ikuharu-movie.com/

新作能『利休』を自ら解説、闊達な語りで観客を魅了する姿から、長年選者を担当している朝日新聞の「朝日歌壇」の投稿はがきを見極める真摯な姿まで、どの馬場さんも、見事なほど、魅力にあふれている。

連歌を楽しみ、原稿に向かい、オンラインで『かりん』編集会議に参加する馬場さん。スマホやZoomも道具として活用している。発する言葉には重みと迫力があるが、いつもほがらかでユーモアたっぷり。若い人にも慕われている。こんな生き方ができたらいいなと思わされる。

※この記事は「ゆうゆう」2023年7月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。


撮影/廣江雅美 取材・文/五十嵐佳子

ゆうゆう2023年7月号

いくらあっても満足できないのがお金。物価の上昇が収まりそうにない今、「節約」は私たち皆にとっての一番の関心事になりました。とはいえ、何もかもケチケチしたくはないし、心まで貧しくなりたくはないもの。無駄な出費をせずにどれだけ暮らしを楽しめるか、そこは知恵と工夫、そしてセンスの見せどころ。『ゆうゆう』7月号特集「節約上手は暮らし上手」では、お金をかけずに暮らしを楽しむ方法を徹底取材しました。「センスのいい節約生活」、「おいしく使い切る食の知恵」、「ポイ活&シニア割活用術」、「リメイクのアイディア」など、参考になることがきっと見つかるはず。ないことを嘆くのではなく、あるもので楽しむこと考えましょう!

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