「らんまんじゃ」と呟くタキ(松坂慶子)はこれまでで一番誇り高く美しかった【らんまん】
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田幸和歌子
最初は大店の当主として生まれながら、体が弱く、草花にばかり関心を寄せる万太郎に手を焼いていたタキ。ヒサが危篤になったとき、万太郎と綾の姿がないことから「許さんき!」と真っ赤になって怒り、万太郎の姿を見た途端に力強く抱きしめたタキの姿はエネルギーに溢れ、若々しく力強かった。
万太郎が運命の人・蘭光先生(寺脇康文)と出会い、学問に目覚めるきっかけとなった名教館に通わせてくれたのもタキだ。
そして、峰屋を捨て、好きな草花の道に進む万太郎に、「許そんぞね」という言葉と涙と共にタキが与えてくれた覚悟。
上京後は万太郎からの便りを心待ちにし、東京大学に出入りしていることも、植物学雑誌を作ることもずっと楽しみにしてくれていた。そんなタキが幼い万太郎と共に歩いてきた横倉山で見つけたマルバマンネングサが、新種と認定された。
自分のやりたいことをただ真っ直ぐやり続けた万太郎は、いつのまにかタキとの思い出も、タキの希望ものせて海の向こうにまで歩みを進めているのだ。
一方、病のヤマザクラを救う手立てはなく、その「天寿」は終わろうとしていたが、接木により生まれ変わり、長い年月をかけて再び花が咲くようになるという万太郎の言葉に、タキは笑顔を見せ「らんまんじゃ」と呟く。
年々、髪や肌の艶もなくなり、体のどこかに痛みを抱えてそれを庇うような前傾姿勢で立ち、座るようにになっていたタキ。祝言までもつのかと思うほどに、調子の悪そうなときもあった。
しかし、万太郎と寿恵子、綾と竹雄という若い新たな家族に囲まれ、桜を見上げるその顔は、これまでで一番誇り高く美しく見えた。
そんな寂しさも抱えつつ、いよいよ新章へ。ここからが万太郎と寿恵子の新たな冒険の始まりだ。