「らんまんじゃ」と呟くタキ(松坂慶子)はこれまでで一番誇り高く美しかった【らんまん】
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田幸和歌子
朝ドラを見るのが1日の楽しみの始まりとなっている人、多いですよね。数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。より深く、朝ドラの世界へ!
長田育恵作・神木隆之介主演のNHK連続テレビ小説『らんまん』の第13週「ヤマザクラ」が放送された。
本作のようにモデルのいる物語は、視聴者の多くが先の展開をある程度知っている・読める「既定路線」となる。しかし、だからこそ、視聴者側が見守る上での覚悟や心構えが必要とされる。
その一つが、万太郎(神木)が新たなパートナー寿恵子(浜辺美波)と人生を歩み始めるにあたっての、そこまでの人生を支えてくれたタキ(松坂慶子)、そして竹雄(志尊淳)との切ない別れだ。
実際、モデルとなった牧野富太郎も、祖母が亡くなってから妻・壽衛と一緒になったという。また、本作では寿恵子の登場により、竹雄が「退場」となる一方、万太郎から姉・綾(佐久間由衣)への「相棒」の引き渡しのターンでもあった。
万太郎の発見した植物が新種として認められたことを知ったタキは、祝言を急ぎ、早く東京に戻るよう万太郎の背中を押す。
一方、綾は土佐の酒屋で組合を作る計画を立て、竹雄と共に奔走するが、女であるがために誰も相手にしてくれず、思わず弱音を吐く。気丈な綾が本音を言えるのは、いつも見守ってくれていた竹雄だから。「あなたがうまいうまいゆうて飲んどったら、それが最大の寿ぎじゃ」「呪いじゃない、祝いじゃ」と綾の女性としての強さを全肯定する竹雄は、槙野姉弟にとって、いつでも欲しい言葉をくれる名パートナーだ。
一方、万太郎は、病気になったヤマザクラを助けたい一心で、食事も睡眠もとらずに研究に没頭し、寿恵子を「邪魔」と言い、傷つけてしまう。そんな万太郎を叱責する綾と竹雄に、早くも「夫婦」の貫禄を見るようだ。
そして、竹雄から寿恵子に植物採集や標本作りの作法が引き継がれた後は、いよいよ万太郎との別れの儀式だ。一緒にいたいという一心から「天才」万太郎に見えている世界を少しでも理解しようと努力してきた竹雄。しかし、それももう終わり。と同時に、竹雄にとっても新たな人生の始まりである。
いよいよ万太郎と寿恵子の祝言の日。万太郎は綾と竹雄に槙野家の一切をを一任すると先月し、分家は大荒れ。しかし、タキがこれまでの分家への態度を詫び、今後は手を携えて共にやっていってほしいと頼み込んだことから、「分家」「本家」の古いしきたりも過去のものとなる。
時代と共に、タキも変化してきた。