【らんまん】致命的ミスで気になるのは、出禁になった万太郎よりも、どうしようもなく傷ついた田邊(要潤)の心のほうだ
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田幸和歌子
さらに、ムジナモが開花する。これは海外の報告では記録がないこと。「槙野は咲かない花さえも咲かせてしまう」と呟く田邊の脳裏には、植物学教室の徳永、大窪(今野浩喜)、学生たちなど、万太郎の周りで自分の咲く道を見つけつつある人々の笑顔が次々に浮かんでいたのだろうか。
その後、徳永はドイツ留学に旅立ち、田邊は恩人である森有礼(橋本さとし)が文部大臣になったことから、女学校の校長に就任。寿恵子は第2子を授かり、万太郎はムジナモの植物画と論文を完成させる。
ところが、田邊の名前がどこにもなかったことから、田邊は怒りと落胆の表情を見せ、大窪が万太郎に刷り直しを命じても、それを制止し、乾いた笑いを浮かべる。そして、万太郎に「出禁」を言い渡すのだ。
自分の誘いを断った万太郎に激怒し、決別した後、一度は受け入れた田邊の真意とは。
自分の力を借りずに研究結果で植物学者として世間に認めさせた万太郎は、恵まれた環境にあるように見えて、その実、国の金で留学した恩を負い目として国の仕事を請け負い、責務を果たしてきた田邊にとって、好きなことのみに打ち込み、実力でのしあがる万太郎はひたすらに純粋で傲慢に思えたとしても不思議はない。
そんな万太郎に論文を書くよう指示したのは、万太郎の力を借りるという屈辱を甘んじて受け入れてもなお、実績を手にしたい焦りからか。
一方、田邊をはじめ、まわりのみんなの顔を頭に浮かべつつ、感謝しながら植物画を描いた万太郎の思いは、残念ながら形として記されていなかった。
このボタンの掛け違いになる致命的ミスで、気になるのは、出禁になった万太郎の行方よりも、どうしようもなく傷ついた田邊の心のほう。田邊が心配でならない。