俳優歴52年の小林薫さんが今思うこと。「今の若い人は芝居も感性もいい。僕らも彼らから学ばなくちゃ」
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ゆうゆう編集部
観る側の想像力に託されるもの
家族、親子、伝統とテーマは重めだが、どこかコミカルなのは、そうした小林さん演じる父親の「あたふたぶり」に共感できるところが多いからでもある。特に、息子に予想外のある事実が発覚したときの父親の反応は秀逸だ。
「脚本を読んだときに『そう来る?』って思ったんですよね。親としては受け入れがたい気持ちもあるんだろうけど、僕はむしろ、そういうときに衝突するよりも動揺すると思ったんです。そのほうが面白いんじゃないかと。そんな話を監督に伝えながら作っていきました。また、今の若い役者さんたちは感性もいいし、芝居もうまい。非常にナチュラルな状態で芝居に入っていく人が多いからそこは感心しますね。僕らも学んでいかなきゃいけないと思うぐらいでした」
舞台が東北ということもあるのか、台詞で饒舌に語って展開する作品ではない。役者さんたちが佇まいで語って、こちらの想像力に託される部分が大きい。見終わったあとゆったりした気持ちになれて、幸せな余韻が翌日まで続くような温かい作品に仕上がっている。
「そうですよね。僕も見終わったときにそんな気持ちになったんですが、実はそんなふうに終わるだろうとは予測していなかったんです。家族がそれぞれの道を行くと、寂しいままでお別れという着地もあるじゃないですか。でも、最後にキュッとひとつになった感じがあってそれがよかった。やっぱり家族って仲よく暮らすことが大事なんだなと改めて思ったんです」
『ゆうゆう』2024年12月号
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