【ブギウギ】六郎(黒崎煌代)のファインプレー!出生の秘密を知っても、関係は全く変わらないことを示してみせた
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田幸和歌子
1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。毎朝元気をもらえる作品になりそうな「ブギウギ」で、より深く、朝ドラの世界へ!
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【ブギウギ】初めて訪れた家でウサギを抱えて窓から?ドタバタ展開に少々違和感が
足立紳・櫻井剛脚本×趣里主演の109作目のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『ブギウギ』の第5週「ほんまの家族や」が放送された。
今週はこの物語が謳う「波瀾万丈の物語」を濃縮したような1週間だった。
自分がツヤ(水川あさみ)と梅吉(柳葉敏郎)の本当の子でないことを知ってしまったスズ子(趣里)は、茫然として産みの親・キヌ(中越典子)のもとへ向かう。
キヌは、自分がスズ子を身ごもっているとき、白壁の家からも実家からも追い出され、途方に暮れていると、里帰り出産で戻っていたツヤが自分の実家・大西家で産めば良いと言ってくれたことを打ち明ける。そして、無事出産後、どん底のキヌに子どもは育てられないと判断したツヤが引き取り、1年に1度は連れて来る、育てられるようになったらすぐに返すと約束したこと。その後、ツヤが戻らなくなったことを語るのだった。
キヌが息子に歌う子守唄が、ツヤがいつも歌っていたものと同じだと気付いたスズ子は家を去ろうとするが、キヌが追いかけて来てスズ子の実父・菊三郎の形見懐中時計を渡す。困ったことがあったらお金にするようにということ、キヌが自分の娘なのに「スズ子さん」と呼ぶこと、苦労の見える手に胸が痛くなる。
放心状態で森を彷徨うスズ子の記憶に、ツヤとキヌと3人、河原で遊んだ遠い日が蘇る。子どもたちと水遊びをして、しりもちをついたまま川に寝転ぶスズ子。
びしょ濡れで大西家に戻ると、六郎(黒崎煌代)が駆け寄る。何をやっていたのかと言い、スズ子の身体をハンカチで拭いてあげながらも、深くは聞かずに心配していた気持ちを伝える六郎。スズ子は六郎に、抱きしめてくれ、体がバラバラになってしまいそうだと言う。
六郎はバラバラなんかにさせないと言い、「お母ちゃん!」と泣くスズ子に「ワイ、六郎やで」とツッコむ。こうしたいつものやりとりに、心底ほっとする。六郎は少々デリカシーがなく、アホな子なのではないかと思ってしまっていたことを詫びたい。
六郎はいろいろ見ていたし、わかっていた。何より、事実を知っても、関係は全く変わらないことを、躊躇なくゴシゴシと姉の身体を拭いてみせる距離感によって示してみせた。ハグも含めて、本当の姉弟でないと、どこかに躊躇いが生まれてしまうだろう。
気まずい夕食の席で、祖母・トシ(三林京子)は、スズ子の出生について秘密にしていたことを詫び、ツヤの思いを代弁する。トシはスズ子も六郎も大切だが、本当は自分の子・ツヤとタカの方が大切だという本音を伝えた上で、ツヤが傷つくのは嫌だが、真実を知ったスズ子がそれをツヤに話すかどうかはスズ子の問題だと伝える。これは「おばあちゃん」としての役割でなく、人間として当然抑えられない感情を伝えることで、スズ子の気持ちを楽にしてあげる言葉だったろう。
大阪に戻ったスズ子は六郎に、香川での出来事は二人だけの秘密だと伝える。しかし、再会の一瞬でおそらくスズ子が真実を知ってしまったことを悟ったツヤと、明るく振る舞うスズ子の間にはギクシャクした空気が流れることに。
時が流れ、スズ子は歌を、秋山(伊原録花)はタップダンスを認められ、USKの中心として活躍していた。