【ブギウギ】週ごとに色味をくるくる変える本作。絶望の中立ち上がるスズ子という、壮絶だった前週に比べ、恋愛パートに駆け足
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田幸和歌子
1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。毎朝元気をもらえる作品になりそうな「ブギウギ」で、より深く、朝ドラの世界へ!
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【ブギウギ】有能なのか役立たずなのか、わからない味わいがじわじわくる「福来スズ子とその楽団」の楽団員たち
足立紳・櫻井剛脚本×趣里主演のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『ブギウギ』の第11週「ワテより十も下や」が放送された。
週ごとに色味をくるくる変えるエンタメ性の高い本作において、難点と言えるのが、大きな山場を越えた直後に「緩急」と解釈するのが苦しい、少々雑な週があること。今週はまさにそんな一例だった。
地方巡業を続ける「福来スズ子とその楽団」が愛知の劇場を訪ねると、スズ子(趣里)のファンだという学生・愛助(水上恒司)が興業主に連れられてやって来る。スズ子の中ではなぜかその学生の姿が弟・六郎(黒崎煌代)と重なる。
そんな中、小夜(富田望生)が勘違いにより、お金をなくしたと騒ぎ、その犯人として愛助を疑ったことから、スズ子が愛助に詫びて、食事に誘う。その後、帰りの汽車でスズ子たちは愛助と再び遭遇。スズ子らが神戸公演の帰りに久しぶりに梅丸少女歌劇団(USK)やはな湯を訪ねた後、東京に戻ると、またしても愛助が下宿先まで来ていた。
蓄音機を聞きに来ないかと愛助に誘われたスズ子は、小夜と共に愛助の下宿を訪ねる。スズ子のレコードや資料などで溢れかえる部屋をスズ子と小夜は強引に掃除する。一方、愛助はスズ子の魅力について熱弁をふるう。
スズ子と愛助の心の距離が近づいていく中、愛助の実家・村山興業の東京支社長・坂口(黒田有)が現れる。2人の年齢差が9歳であること、村山興業の跡取りと歌手の恋愛はあり得ないことなどから猛反対する坂口の存在が、2人の思いを盛り上げることに……。
六郎の死と戦争で浮足立つ人々と、歌う意味を問い直し、絶望の中立ち上がるスズ子という凄まじく情報量が多く、壮絶だった前週に比べ、今週はベタな恋愛パートのあらすじを駆け足で消化していった印象が際立つ。
そうしたベタ展開を回すために、便利使いされた犠牲者が、小夜に扮する富田望生だ。大仰な田舎喋りで、無闇に人を疑い、噛みつき、顔芸を披露する。こういう描写で笑う人もいるのだろうが、なんだかモヤモヤする。『なつぞら』でヒロイン・なつ(広瀬すず)が仔牛を助けた自慢話を授業中に再現するために仔牛役をさせられたときの富田の姿が脳内にチラチラ浮かんで、黒い気持ちが湧いてくる。と思ったら、今週の演出は『なつぞら』チームの人だった。