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【ブギウギ】タナケン=棚橋(生瀬勝久)のキャラが秀逸!プロレスラーと同じ名字の登場人物が多い理由は?

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田幸和歌子

【ブギウギ】タナケン=棚橋(生瀬勝久)のキャラが秀逸!プロレスラーと同じ名字の登場人物が多い理由は?

「ブギウギ」第76回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。毎朝元気をもらえる作品になりそうな「ブギウギ」で、より深く、朝ドラの世界へ!

★前回はこちら★

【ブギウギ】3ヶ月の拘束と引き揚げを涼しい顔で「大変だったぁ」の一言でまとめるのが、羽鳥(草彅剛)というキャラクター

戦後、スズ子のキャリアが新しい世界で広がりをみせていく。

趣里主演のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『ブギウギ』の第16週「ワテはワテだす」。楽団を解散させ、付き人としてどこか心の支えでもあった小夜(富田望生)もスズ子のもとを去った。そんなスズ子の前に開ける新たな道、それは喜劇王“タナケン”、棚橋健二(生瀬勝久)が手がける舞台「舞台よ!踊れ!」での共演だった。

女優・福来スズ子の誕生である。しかし、これまでの歌手として歩んだものとは全く違う舞台での演技という世界にとまどうスズ子。しかもこのタナケンは、共演相手であるスズ子に、「好き好んで呼んだわけではない」、スズ子が“スイングの女王”だから呼んだだけだとそっけない。

この棚橋のキャラクターがなかなか秀逸だ。数多くのお客さんを笑わせる喜劇王なのに、舞台を降りた楽屋などでは、スズ子への接し方などをはじめ、クールでどこか取り付きにくいようにも見える。そんな棚橋に、スズ子はある決意をもって正面から棚橋に向き合う。稽古場でスズ子が披露したのは、大阪弁での演技だった。自分らしく、そう、ワテはワテ。福来スズ子は福来スズ子だ。

共演者からは、棚橋先生の台本を勝手に変えるなんて!と非難されるが、当の棚橋は、「面白けりゃいいんです」とスズ子の「らしさ」を受け入れ、本番もそうしていいと言う。この容認に驚くスズ子にタナケンは言った。

「僕を誰だと思ってるんだい? 喜劇王・タナケンだよ」
思うように好きにやればいい、自分がすべて受けてあげると。

棚橋は、幕が上がれば舞台は役者のもの、好きにやればいいと持論を語った。舞台はお客様が現実を忘れるためにわざわざお金を払って来てくれるもの、そこに当たり前のものを見せてもつまらないだろうと。まさに、梅丸少女歌劇団時代に蒼井優が演じた大和先輩がスズ子に諭したプロとしての姿勢をそのまま重ね合わせるような見事な演出だ。

そして、舞台に立つスズ子からお客さんは目が離せなくなる、それは天性の才能だろうと大きく評価する。この第一印象の悪さと高いプロ意識と喜劇王の自負、心の広さ、そして舞台上で見せる軽妙な演技。棚橋を演じる生瀬は、渥美清や志村けんをイメージしたギャップ感を意識したと語っている。このギャップに、タナケンという人間性の大きさが集約されている。

「ワテはワテや!」

羽鳥善一(草彅剛)の手による劇中歌「コペカチータ」を、舞台上ではじけるように歌い踊る。これまでの仲間たちが去り、とまどいを感じながら歩いていたスズ子の道に、大きな光が差し込んだ。

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