大切な人を亡くし苦しんだ日々を経て辿り着いた、30㎡ワンルームのシンプルな暮らし【60歳パフューマー 山藤陽子さん】
人生の後半戦、“自分サイズ"を見直して、シンプルかつコンパクトに暮らし替えをされた方を紹介する「小さい暮らし」の見本帖。前回に続き登場いただくのは、パフューマーの山藤陽子さん。執着を手放してこれからを見つめ直すために選んだコンパクトルームで暮らしています。後編は、大切な人を亡くし苦しんだ日々を経た今のことをうかがいます。
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>>60歳目前に愛娘を喪い、ひとりに。パフューマーがこれからを見つめ直すために選んだ、30㎡の小さな部屋大切な人を亡くし苦しんだ日々を経て今が
長く苦しい時間を経て、「自分なりの死生観や残された時間の意味がやっと腑に落ちて今がある」と山藤さん。これ以上失うものはないのだから、執着も何もかもを手放して、自分にできることをしようと少しずつ前を向き始めた。
心と持ち物の整理に不可欠だったのが、以前の1LDK·53平方メートルの部屋から、現在のワンルーム·30平方メートルの部屋への引っ越し。
「窓からの景色がすばらしくて、空が広く、富士山も見えるところが気に入りました。人気の街なので、一歩外へ出るとにぎやかな雰囲気に浸れます」
物理的に持っていけないもの、これを機に手放そうと思った品々は、欲しいと言ってくれた友人知人に譲ったり、業者へ買い取りに出したりして身軽に。
「ひとりになり、たくさんのものを手放し、執着をなくすという人生のテーマがより明確になりました。大事な存在を亡くして苦しみましたが、体は魂の入れ物だということも再確認したんです。体はいずれ朽ちていきますが、ヴィンテージのマシンと一緒で、ケアをしながら上手につき合えば、最後まで乗りこなせるのではないかと」
山藤さんが2軒前に暮らしていた南青山の住まいは、自身のパフュームやセレクト品を実際に手にとって試せるショールーム兼用で、タルトを焼いてお客さまを迎えたりしていたそう。
「たぶん私、おもてなしをするのが好きなんです(笑)。ゲストに気持ちよく過ごしてもらえるような場所を、またもつことができたらと思っています」
「はじめたこと」は何ですか?
ヴィンテージマンションでの暮らしで「古さ」を慈しむ気持ちが生まれました
「今の住まいは築50年超。でも、メンテナンスが行き届いていて共用部分もピカピカなんです。建築当時の部分も多いので、収納扉などはていねいに愛でるように開け閉めしています。お湯がすぐに出ないといった不便さを楽しむ、心の余裕も生まれました」
自分をケアできるのは自分だけ。食生活からていねいな暮らしを意識するように
引っ越しのときも手放せなかったのが調理家電の数々。
「自分の体を最後までいい状態で動かすため、ていねいな食生活を心がけるようになりました」。
自炊が増え、「メルカリ」で買ったホームベーカリーでパンも手作り。最近加わった豆乳メーカーはスープも作れる。
