50代・60代が見逃しがちな「歩けなくなる危険信号」とは?足の専門家が警鐘を鳴らす”変化”
公開日
更新日
ゆうゆう編集部
50代後半から60代にかけて、多くの人が感じる「歩きにくさ」や「足の疲れやすさ」。これらの変化は単なる加齢現象ではなく、健康寿命に直結する重要なサインです。足と歩行の専門医である村井峻悟さんに、60代から始める足の健康管理について詳しくお話を伺いました。
PROFILE
村井峻悟さん・足と歩行のクリニック荻窪院院長
整形外科専門医として大学病院や関連病院で経験を積んだ後、アメリカの足病医(Podiatrist)という専門領域に出会い、日本では細分化されている足の総合的な診療を目指して開業。「歩けない人をなくしたい」をコンセプトに、足と歩行の包括的な治療を提供している。
日本ではめずらしい「足の総合診療」を目指して
村井さんが足と歩行の専門医になったきっかけは、足病医という分野との出会いだった。整形外科専門医を取得後、サブスペシャリティを考えていた時期に、この領域を知ったという。
「日本では爪は皮膚科、創傷は形成外科、骨は整形外科、歩行はリハビリテーション科と分かれているのですが、アメリカのポダイアトリストはこれらを総合的に診ることができるんです。これまで日本で取りこぼされていた分野を専門にしようと考えました」
足の分野は整形外科の中でも「取り残されている」分野だったという。村井さんは、アメリカで学ぶかそれとも日本で開業するかを悩んだ末、後者を選択した。
「歩行を実際に見ることができるのが大きな強みです。歩き方を見ないと何がおかしいかが、レントゲンだけでは見えてこない部分があります。静止して立っている時と、歩いている時の足の形や構造は違うんですよ」
50〜60代から始まる足の変化とその影響
年齢とともに足や歩き方にはどのような変化が現れるのだろうか。村井さんは、サルコペニア、ロコモティブシンドローム、フレイルという3つのキーワードを挙げて説明する。
「年齢とともに筋力低下、移動機能の低下、心身全体の虚弱状態に陥ります。足の筋力が落ちてくると、アーチが低下して成人期扁平足、後脛骨筋機能不全症、外反母趾などによる痛みが出てきます」
特に注意すべきは50〜60代からの変化だ。この時期に現れるのが「プレフレイル」という状態で、まだ正常状態に戻ることができる段階だという。
「プレフレイルの時点で介入ができると、回復も期待できます。しかし、フレイルまで進行してしまうとなかなか元に戻れないので、早期の介入が重要です」
歩けないことの最も大きな問題は、社会とのつながりが断たれてしまうことだと村井さんは強調する。
「買い物に行けない、散歩に行けない、人と話せなくなってしまう。歩行を守れないと認知能力も筋力も体力も落ちてしまいます。頭がしっかりしているのに歩けないというのは、とても辛いことなんです」
見逃してはいけない足の危険信号
多くの人が「年のせいだから仕方ない」と諦めがちな足の不調だが、実は早期発見・早期治療が可能な症状も多い。村井さんは、受診のタイミングについて具体的に説明する。
「足底にタコや魚の目などがあれば、その時点で異常が起きています。また、外反母趾もそれほど痛みがなかったので放置していたという方が多いのですが、進行すると人差し指が脱臼してしまうことがあります。脱臼すると元に戻すには手術が必要になってしまいます」
痛み、違和感、疲れやすさ、そしてタコや魚の目の存在は重要なサインだという。
「現状維持も努力しないと現状維持にならないんです。年とともに絶対に筋力が落ちてくるので、よく患者さんにも言いますが、『現状維持しようと思ったらトレーニングをやらないといけませんよ』と」
写真/ピクスタ
村井さんのクリニックでは、初診の患者全員の歩行動画を撮影し、歩き方の分析を行っている。これにより、レントゲンだけでは分からない問題点を発見できるという。
「歩行は、かかと、足首、つま先の3つの転がり(ロッカー)で成立しています。この中の1つでも不足すると異常が現れてきます。歩き方とレントゲン所見、超音波での腫れている筋肉や腱の状態は基本的につながっているんです」
