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「先生、妻を疑っているんですか?」不可解な眠りの原因は?法医学が暴いたコーヒーの秘密

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ゆうゆうtime編集部

私はフランツに、採血や採尿に使う小さな容器を七つ渡し、毎晩、奥さんに渡されたコーヒーを飲む前に、少量をサンプルとして採取するよう求めた。それぞれの容器には曜日を記したラベルが貼ってあるので、何曜日のコーヒーかが分かるようになっている。眠り込んでしまった曜日のラベルには、バツ印を入れてもらうことにした。
「先生、妻が私に毒を盛っている、とお考えですか?」

「今のところ、何の先入観も抱いていません。何が起こっているのか理解しようと努めているだけです」と私が答えたのは、フランツが挙動不審になり、妻がこれに気づくことを恐れたからだ。実のところ、私は妻が元凶だろう、と疑っていた。彼女がどのような手法を用いているかはまだ分からなかったが。


翌週、フランツは、テレビを観ながら寝てしまうソファの下に隠しておいたコーヒーサンプルの容器をすべて携え、いくらか焦れた様子でやって来た。私の忠告に従い、妻にはまだ何も打ち明けずにいた。私はサンプルの検査を毒物学研究所に託した。それから1週間後(そのあいだにもフランツは2回、テレビの前で眠り込んだ)、検査結果が届いた。

私はフランツに来てもらい、一般人には何が何だか分からない単語が並んでいる検査結果を説明した。フランツがバツ印を入れた容器——彼が眠り込んだ日のもの——のサンプルからは、催眠作用のあるジアゼパムが大量に検出された。最初の面談での私からの質問で薄々察してはいたものの、フランツが受けたショックは大きかった。

フランツの被害届を受理した警察は、すぐさま彼の自宅を訪れた。妻のアントワネットはあっさりと自供した。信じられないような話だった。

彼女は数か月前に出産したばかりで、我が子のそばを離れることは望まなかった。しかし、彼女には愛人がいて、逢瀬を楽しみたかった。そこで、フランツが意識を失って眠っているときに、家に愛人を連れ込むことにしたという。

ショックに耐えたフランツは、自分が赤子の父親であるか調べることにした。

彼の懸念は図星であった。
DNA検査の結果、彼が父親でないことが明らかになったのだ。

これまで生きてきた世界が瓦解したフランツは、新たな人生へと踏み出したようだ。

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著者 Profile

フィリップ・ボクソ(Philippe Boxho)
法医学医。作家。
1965年生まれ。ベルギーを代表する法医学医であり、同分野の第一人者。リエージュ大学法医学教授、および同大学法医学研究所所長を務める。そのキャリアにおいて6000体を超える検案、4000体以上の司法解剖を執刀。膨大な専門知識を有する医学の権威として、重罪裁判所での証言回数は300回以上に及ぶ。医学・学術界への貢献に加え、作家としてもフランスやベルギーで絶大な人気を誇り、本書を含め、著作は世界で累計160万部を売り上げる。「死」や「法医学」という厳粛な現実を、人々の知的好奇心を揺さぶる一級の物語へと昇華させるその筆致は、多くの読者を魅了してやまない。

※この記事は『死体は語りだす』フィリップ・ボクソ著、神田順子訳(三笠書房刊)の内容を、ウェブ記事用に再編集したものです。

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