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50代のひとり旅は頑張らなくていい——神戸のホテルで味わった“極小の旅”の満足感【岸本葉子さん】

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「ひとり旅、してみたい。でも少し不安」——そんな方も多いのでは? 「50代は『ひとり旅』の適齢期」と語る、エッセイストの岸本葉子さんが、50代で再開した旅の楽しみ方を綴った新刊が話題です。『50代からのしあわせ「ひとり旅」』から一部抜粋して全5回でお届けします。第1回は、再スタートのきっかけについて。

介護を経て、再スタート

ひとり旅を長いことしていませんでした。50代で再スタートするまでは。その前に最後にしたのは、たぶん30代に入るか入らない頃だと思います。

40代、50代でも出張はときどきしていました。そういうときの旅は、行った先で用事がぎっしりです。飛行機で行くところなら、空港と市内をつなぐバスの乗り降りのときしか、その町の空気を吸わなかった、新幹線で行くところなら、往復の列車の中で2食ともすませ、その町の名物が何であるかも知らなかった、ということはよく起きます。

詰め込みぎみだったのは、家族の状況のためもあるかもしれません。40代から50代にかけて在宅介護をしていました。

きょうだいが交代で親の家に泊まっていたので、出張はできました。きょうだいも快く送り出してくれました。でも、自分がいない分、きょうだいに負担がかかるのはあきらかです。親の入院など、急な事態があったとき「物理的に対応できないところにいる」というのは、自分だけ義務を免れているようで、それだけで後ろめたいのです。なので用事がすんだら、ただちに家へ向かっていました。

昔、落合恵子さんが高齢のお母さんの介護について書いているのを、読んだことがあります。落合さんもときに出張をしていました。帰りの駅で新幹線の券を買うとき、落合さんは葛藤します。細かな点をおぼえていないのですが、わかりやすく伝えると、帰りの列車を「こだま」にすれば、到着まで時間がかかり、その間体を休められる。たぶんそれは許されること。けれどもやはり「ひかり」を選んで帰るのだと。

落合さんはたしかひとりっ子。抱えていたものの重さは、きょうだいと分担できる私には遠く及びません。が、その選択はわかります。私も帰りの駅で、発車までの残り時間に気をもみながら、1本でも早い「ひかり」、10分でも早く着く「のぞみ」を買い、ホームへ急ぐのでした。

介護が終わって、ひとり旅を再スタートしたのは……この質問を受けるたび「神戸です」と答えていましたが、この本を書くために手帳をよくよく見たところ、松山でした。神戸となっている記事を読んで下さった方には、すみません! けれど本当の再スタートが神戸だったことに、噓はないのです。というのは、松山の記憶がほとんどなく……。

手帳によると、なんと葬儀の3日後に行っています。月曜に父が亡くなって、松山はその週の土曜という際どさでした。

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