【豊臣兄弟!】政略結婚をどう受け止めた? 茶々(井上和)17歳の決断と、あさひ44歳(倉沢杏菜)の輿入れが切ない
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志賀佳織
2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」。今まであまりスポットライトの当たることのなかった豊臣秀長を主人公に、戦国時代がどう描かれるのか? ここでは、ストーリー展開が楽しみな本ドラマのレビューを隔週でお届けします。今回は、第39回「茶々の本心」と第40回「あさひの輿入れ」です。
歴史上の人物を知っていくとき、もっとも興味深いのは、その時々のその人間の気持ちではないだろうか。昔であればあるほど記録は少なく、ましてやこと女性に関してとなると、いっそう史料も限られる。しかし、そこにはかなりのドラマがあったりもする。
ここ2回のエピソードは、どちらも豊臣秀吉(池松壮亮)、豊臣秀長(仲野太賀)兄弟の命運を支える働きをした女性を取り上げたもの。いずれも、心揺さぶられるストーリーだった。
どちらもいわゆる「政略結婚」を強いられたわけだが、それを彼女たちはどう受け入れていったのだろうか。いや、もしかすると、それは当時当たり前に行われていたことであって、私たちが考えるほど、当人たちに葛藤があったり、悩んだり、ということがなかったのかもしれない。しかし、それでも、と思ってしまうのである。そこは同じ人間、何百年の時を経ようと、社会基盤が著しく異なっていようと胸が波立つこともあっただろうし、人知れず涙することもあったのではないかと思う。
第39回は、織田信長(小栗旬)の妹・市(いち/宮崎あおい)の長女・茶々(井上和)、第40回は、豊臣兄弟の妹・あさひ(倉沢杏菜)。関白・秀吉の天下一統のために、大きな決断を強いられた二人の女性の物語だ。
第39回「茶々の本心」
天正13(1586)年、秀吉と秀長は3カ月ぶりに大坂城で再会し喜び合う。しかし喜ばしいことばかりでもなく、織田信長の五男で秀吉の養嗣子(ようしし)となっていた於次秀勝(おつぎひでかつ/柊木陽太)が病に伏せって、年を越せないと言われていた。そこへ、徳川家康(松下洸平)の家臣である石川数正(かずまさ/迫田孝也)がやってくる。
「小牧・長久手の戦い」のあと、家康は北条氏政(うじまさ/谷原章介)との盟約により、信濃の国衆(くにしゅう)である真田と争いを続けていた。真田は秀吉を頼ってきたため、秀吉が数正を呼び、真田との和睦を持ちかけたのだ。「真田の領地を北条と分け合う約束があるゆえ、後に引けぬのであろう。この関白・秀吉の許しなく、これ以上戦することはまかりならぬ」
そのような中、秀吉は茶々の嫁ぎ先を探して、本人の意向を確かめに訪れていた。ところが、茶々はどこにも嫁ぐ意思などないと、端から受けつけない。妹の初(はつ/田牧そら)も江(ごう/西川愛莉)もすでに嫁ぎ先が見つかっていたが、茶々だけがいまだ決まっていないのだ。「私は生涯、この家のお荷物となって、ここで朽ち果てまする。殿下の苦しむお顔を眺めながら」
茶々の話題に、豊臣兄弟の母・なか(坂井真紀)は、「もしや思い人がいたりしてな」と、母ならではの意見を挟んできた。あさひが、「もしかして藤吉郎兄様だったりして」と言うと、秀吉は「そんなことあるわけなかろう」と笑い飛ばす。しかし、秀長は何かを思いついたような表情を見せると、真剣に考え込むのだった。
一方、浜松城では評定が開かれていた。「秀吉に勝つ策はあるか」と家康に聞かれた数正は、「ひとつだけありまする」と答える。「秀吉には血筋がござりません。それが急所にござりますれば、秀吉、秀長が死ぬのを待つのでござる」
他の家臣からは非難囂々だが、数正は「これまで耐え忍んだ月日を思えば、さほど長くはござらぬ。もし我らが先に死んだとて、殿には長丸様はじめよきお子達がおりますれば、必ずや徳川の世が訪れまする」と揺るがない。「秀吉と秀長、今すぐ死んでくれんかのう……」と、家康は爪を噛んで悔しがるのだった。結局、秀吉との戦に備えることで総意は決まっていった。
大阪城では、福島正則(まさのり/松崎優輝)と加藤清正(きよまさ/伊藤絃)が、石田三成(松本怜生)と言い争っていた。通りかかった秀長が3人に話を聞いてみると、「跡継ぎをもうけるために、殿下がもう一人妻をお迎えになるべきだ」と提言した三成に、寧々(ねね/浜辺美波)の心情を慮った正則と清正が反対しているのだ。秀長は、「実は自分も三成と同じ考えじゃ」と告白する。
秀長は、秀吉と二人になったところで、「新たに妻を迎えるべきだ」と切り出した。全く取り合わない秀吉だが、秀長の説得にしだいに冷静さを取り戻していき、「寧々には自分から伝えるまで言うな」と一応の了承をした。しかし、秀長が相手について「わしは茶々殿しかいないと思うておる」と告げると動揺、「己が何を言うているかわかっておるのか。茶々は、わしが討ったお市様の娘なのじゃぞ!」と激しく抵抗する。「そうじゃ。織田の血を引く娘じゃ。そして浅井の血も。羽柴と織田と浅井の血が一つとなるのじゃ。兄者、これ以上ふさわしき相手はおらぬ」。秀長の言葉は、もっともらしく響いた。
秀吉はひたすら、寧々の受ける傷を心配している。二人がやりとりをしているところに、廊下でその話を聞いていた寧々が現れる。そして、毅然としてこう言った。「それがあなた様のためなら、私は構いませぬ。随分長いこと、あなたとともにこの家を支えて参りました。いつの間にかこんなに大きくなって。私にとっては、この家こそがあなたとの子どもなのです。その子を守るためなら、どんなことでも受け入れます」
しかし、その話をもちかけられた茶々は激怒。弓矢を射って、秀長を追い詰めていく。秀長は、なおも説得を続ける。「こうは考えられませぬか。今や殿下は力も位も手に入れた、まさに天下人。もし子が生まれれば、いずれは跡を継いで天下人となる。信長公もお市様も浅井殿もなし得なかった天下人の夢を茶々殿がかなえられるとしたら、まことお市様は喜ばれるに違いない。いつの日か、浅井の名もよみがえらせることもできるかもしれませぬ。よくお考えくだされ」
それでも反発し続ける茶々の前に、突然、寧々が弓を持って現れた。「いつまでも覚悟が決まらぬと言うなら、私と勝負をしましょう。私が勝てば、この家のために殿下の妻になってもらいます。あなたが勝ったら、私の命は聞かずともよい。あなたの好きになさい」
寧々の迫力に気圧される形で、茶々は勝負を受け入れる。最初に射ったのは寧々。その矢は、的の中心部をわずかにはずれた位置に刺さった。そして、茶々の番である。茶々の脳裏には、かつての母の言葉がよみがえってきた。「母は今、生まれて初めて己が決めた道を進んでおるのじゃ。これほど嬉しいことはない。そなたにも、いつかこういう日が来ることを願っておる」
茶々の矢は、ど真ん中に的中した。「見事じゃ、あなたの好きになさい」という寧々の前に、茶々は突如座り、居住まいを正すと、寧々を見上げてこう言うのだ。「私は殿下の妻になりとうございます。的の前に立ち、己の気持ちを決断しました。父と母の夢のため、そして豊臣のため、殿下の妻になりとうございます。どうかお許しくださりませ」
寧々もそれを受け入れた。「よく決心しましたね。あなたが的を射抜き選んだ答えです。誰に気兼ねをすることもありません。これからはともに、この家を支えておくれ」
その夕、寧々と二人で廊下に立った秀長は、夕日を眺めながら、寧々がわざと的を外したことを見抜いて告げた。寧々は、それでも茶々がどういう答えを選ぶかまではわからなかった、できることなら「殿下の妻にはならぬ」と言ってほしかったと涙をこぼすのだった。
それから間もなくして、突然、石川数正が再び大坂城へやってきた。秀長が駆けつけると、「この石川数正、徳川を捨て、出奔して参りました」と驚くべきことを言った。
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