【豊臣兄弟!】政略結婚をどう受け止めた? 茶々(井上和)17歳の決断と、あさひ44歳(倉沢杏菜)の輿入れが切ない
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志賀佳織
第40回「あさひの輿入れ」
数正は秀吉、秀長の前で「家康めにはほとほと、愛想がつきましてございます。いくら私がことの理を解こうと、豊臣には従わぬといって聞き入れませぬ。ほかの家来どもも、血気にはやるばかり。勝ち目のない戦でもやめようとはしませぬ。あやつらとともにいては、命がいくらあっても足りませぬ。まっこと愚かな田舎侍……」とまくし立てるが、それが真意とはにわかには取りがたい。しかし、「そなたが我らのもとに参ったとあれば、さすがの徳川殿とて、これ以上歯向かうことはできますまい」と言い、数正が豊臣に臣従したことで、無駄な戦は避けられるのではないかと期待もした。
一方、出奔されたほうの徳川は大騒動となっていた。家康は北条氏政のもとを訪れ、このたびのことで家康が豊臣に臣従するのではないかと懸念する氏政に対して、意に介さない姿勢を見せた。そして、「手の内をあかされた今の我らが攻撃をしかけるなど、敵も思うておりますまい。今こそ、攻め時でござる」とさらに勢いを強めるのだ。
秀吉の忍耐もついに切れた。「徳川はいまだ上洛に応じず、この関白・秀吉の命に背き、真田との和睦をも拒んだ。世を乱さんとする徳川を、このまま見逃すことはできぬ。支度が整いしだい、出陣じゃ」。しかし、秀長はまだそれに納得できなかった。
ある夜、秀長は数正と酒を酌み交わし、何とか家康を説き伏せる術はないかと相談していた。数正は「あるわけござらぬ。私が出奔したとて止められませなんだ。これ以上どうせよと言われますか」と返す。それを聞いて秀長は、「やはり徳川を守るために、徳川を捨ててこられたのですね」と確信する。
そのとき、盃が揺れ始め、部屋全体が激しい揺れに見舞われた。天正13(1586)年11月29日、中部・畿内を中心に巨大地震(天正地震)が発生したのだった。秀長は大坂城の天守で無事、秀吉と再会できたが、被害は甚大で、美濃の大垣城も近江の長浜城も崩れた。秀吉は呆然とした表情ながら、こう告げた。「残った兵糧はことごとく民に分け与えよ。もう戦などしているときではない。徳川と和睦する」
それから2カ月、秀吉は家康と和睦を始めた。家康は和睦の条件として、秀吉の身内を妻として迎え入れることを提示してきた。動揺する秀吉と秀長。というのも、妻として差し出せるとしたら、妹のあさひしかいないからである。しかし、あさひには長年連れ添った夫・副田吉成(よしなり/前原瑞樹)がいる。ほかに道がないと判断した秀吉は、みずからあさひ夫婦に説明することにした。
秀吉から話を聞かされた二人は、ショックのあまり言葉を失う。秀吉は二人への感謝を伝え、吉成には但馬(たじま)の国を与える告げる。しかし吉成は、離縁するつもりは毛頭ないと言い張る。秀吉はついに、「逆らうならば厳罰に処す」と関白としての命を下した。
その夜、吉成はあさひを連れて逃げ出そうと決意。門を出ようとするが、「やっぱり行けない」とあさひの足が止まる。そこを、秀長や家臣たちに取り囲まれてしまった。「密告があったのじゃ。おぬしらが逃げるかもしれぬと」。「お前が密告したのだな」とあさひを責め始める吉成。「お前などこっちからお断りじゃ。離縁してくれるわ」
秀吉の前に連れてこられた吉成だったが、秀長から、密告したのは自身であろうと見抜かれる。自分を思って決断できないあさひのため、下手な小芝居を打ったのだった。「藤吉郎殿、小一郎殿、あさひをまこと豊臣の天下を支える一人にしてやってくだされ。わしは出家いたしまする。わしはあさひから、たくさんのものをもらった。それさえあれば、この先も生きていけまする。長きに渡り、お世話になり申した」。涙ながらにそう訴える吉成に、秀吉も最大の感謝と謝罪の念をもって、こう答えるのだった。「副田甚兵衛丈吉成、大儀」
秀長があさひに、「こたびはかたじけない」と声をかけた。「私で役に立てるなら。甚兵衛はあれからどうなったの?」と明るく問い返すあさひに、秀長は「兄者の逆鱗に触れて、城を追われたわ」「そう」
その場に一緒にいた姉・とも(宮澤エマ)、ともの夫・長尾吉房(よしふさ/上川周作)、なかが、それぞれ用事があると口にして席を立った。すると秀長が突然、「この庭ももう見納めじゃあな。あさひ、こっちに来てよう眺めておいたらどうじゃ」と声をかけた。秀長に誘われて、廊下に立ったあさひ。植木の陰に隠れている吉成の顔が池の水に映っているのを見つけてしまった。
「今頃どうしておるかのう、甚兵衛は」という秀長の問いかけに、あさひは目一杯明るく、声を張ってこう返した。「きっとどこかにこそこそ隠れて、おなごのことでものぞき見してるんじゃない? ずっと一緒にいたんだから、相手のことがわかるのはお互い様よ。もしどこかであの人に会ったら伝えて。ありがとうって。誰よりも私をわかってくれて、背中を押してくれた。本当のことを言うと、徳川殿に嫁ぐのは少し怖いけど、でも、私にしかできないことを存分にやってみようと思う。そう思えたのは、あんたのお陰だって。行ってきます、そう伝えて」
天正14(1586)年5月、輿入れが行われ、あさひは家康のいる浜松城に入った。
茶々が秀吉に嫁いだのが17歳。このとき秀吉は49歳。人生50年時代の49歳は、かなりの「老人」に映ったに違いない。天下人の血筋を継ぐためとはいえ、茶々はどのような思いで嫁いだのだろうか。また、家康に嫁したときのあさひは44歳。家康は45歳である。共白髪と信じていたであろう伴侶と引き離されて、その年から知らない土地へ一人送られるつらさはいかほどのものだっただろうと思うと、胸が締めつけられる。そして、寧々も吉成も。歴史の表舞台にはあまり出てこない彼らの涙を思った、そんな2話だった。
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