東大阪で生まれたヒロイン岩倉舞(福原)が、長崎・五島列島に住む祖母や様々な人との絆を育みながら、パイロットとして空を飛ぶ夢に向かっていくNHK連続テレビ小説『舞いあがれ！』の第9週目。

今週はいよいよフライト過程がスタート。フライトの臨場感と迫力、緊張感、高揚感が大きな見どころであり、物語の展開上は航空エリート一家のツンツン野郎・柏木（目黒蓮）が主役的役割を担っていた。

舞は、柏木と水島（佐野弘樹）と3人1組のチームに。指導教官は、容赦なく学生を退学させると噂の鬼教官・大河内守（吉川晃司）で、舞たちは必死にフライト訓練に臨む。

舞が着陸に苦戦していると、柏木（目黒蓮）が練習に付き合ってくれたことから、二人の距離は接近。しかし、ある日の訓練空域が直前に変更になった際、柏木は自信満々にトップバッターでの操縦を名乗り出るが、現在地を見失うミスをし、大河内から「自分を過信する人間はパイロットに向いていない」と厳しい言葉を向けられる。

そこから目標とする場所を間違えるミスをする柏木。さらに、悪天候の訓練時、中止すべきという舞と水島、飛べると言い切る柏木の意見が対立。そこで、大河内に「意見をまとめられないようなチームに安全なフライトができるわけがない」と断ぜられる。「鬼教官」と言われる大河内の言うことは、いちいち真っ当だ。

そんな中、中止に納得がいかない柏木が不服を唱え、水島と衝突。それぞれ「ラジャーしか言えないアホ」「迷子野郎」と罵り合い、取っ組み合った末、舞の手作り操縦かんが壊れてしまい、柏木は気まずそうに立ち去る。

頭に血がのぼると幼児化するメンズ二人に対し、舞の精神年齢、人生経験値の高さが見える対比だ。

自分のミスを認めることができない柏木のプライドの高さ、挫折を知らない弱さと、「『沈み』がわかりません」などと「できない」「わからない」ことを自分で認め、言うことができる舞の強さ。空の上は孤独だから自分一人で解決するしかないと考える柏木と、だからこそチームで協力したいと思う舞。

相手を下に見ているからこそ、教えてあげることはできるのに、人に教えてもらう、力を借りることができない柏木と、誰の言葉でも素直に耳を傾け、吸収できる舞――「航空学校編」に入り、急に劣等生ポジションになっていた舞の「ヒロイン属性」が周囲との対比により、じわじわと浮かび上がってくる。

と同時に、自信満々だった柏木が舞に見せる顔がどんどん柔らかく、無防備になっていく変化も今週の見どころだ。

個人的には、ミスを繰り返し、絶不調の柏木がお花畑に佇む哀愁とおかしみ漂う姿にグッときた。なにせ航空学校の受験時、面接で一緒になった舞に「頭の中、お花畑か」という辛辣な言葉を浴びせていた柏木が、お花畑でションボリ……。まさかこんな形で「お花畑」の因果応報があるとは。

週後半で柏木の苦悩と迷走がクローズアップされる重いトーンの中で、ところどころに滲むこっそり含み笑いのバランスが秀逸な週だった。