【大奥2話】男女逆転の謎が描かれる。修羅になる斉藤由貴の怖さ。目から光が失われていく福士蒼汰の悲しさ
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田幸和歌子
一方、京から来た見目麗しい元僧侶の有功に、大奥の男たちは興味津々で、ねちっこい嫌がらせを繰り返す。お椀にネズミを入れられたときには、玉栄(奥智哉)が注意に行くが、逆に絡まれることに。
大奥の陰湿さが作品全体に立ち込める中、なかなか帰ってこない玉栄を探す有功は、春日局に呼び出される。春日局は、京に文を送り、助けを求めようとした有功に対し、すでに父に売られていたと告げ、大奥から出る唯一の方法として、残酷な現実を突きつけるのだ。
「死して魂となることでございます」
さらに道場に呼び出された有功は剣の指南を受けるよう強要され、御仏に仕えた身として剣を人に向けることを固辞。かわりに素振りを1000回やると宣言し、何度も倒れそうになりつつも、とうとう1000回やってのける。
絶望的な状況でもなお、人の悪意・敵意を向けない有功の気高さ。それは自身の運命を呪っていただろう家光の心を動かす。家光は1000回の素振りの話を耳にし、驚き、夜に有功の部屋を訪れて、「やる」と白い猫を放り投げる。
そして、理由を尋ねた有功に、「可愛らしいからじゃ」の一言の愛らしさ。その一言に、頬を緩める有功――絶望的な運命にとらわれた2人の心が通った瞬間に見えた。
徳川家を守る一心で、自身の正義に従い、修羅になる斉藤由貴の怖さ。最初は柔らかな京ことばで温かな空気を漂わせていたのに、どんどん目から光が失われ、言葉から、佇まいから、温度が消え失せていく福士蒼汰の悲しさ。全身から放っていた怒りや苛立ちが徐々に和らぐ変化を見せた堀田真由の愛らしさ。その先に待つ絶望を思うと、なんともやるせない気持ちになる第2話だった。